コミヤ

ベルリン・天使の詩のコミヤのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.6
人間として生きることを肯定してくれる映画は否が応でも肯定したくなる。他にも言及されている方がいたが、是枝監督の『空気人形』を連想した。有限の命を生きること、その先には死があるということを肯定的に捉えているところなど類似性が感じられる。

『パリ、テキサス』もそうだけどヴィム・ヴェンダースは映画(に限らず全ての芸術)の持つ力を本気で信じている人のように感じられる。特に本作は、作中に語り部が登場するように、物語の存在意義のようなものに言及していて、先日観た大林宣彦の『この空の花』に近いものも感じた。
天使は人類の歴史の一部となるべく人間になる。その歴史とは教科書に載るような偉人たちだけのものではない。この世に生まれ、五感を駆使して心で感じるという感覚と感情を持って生きた全ての人類の相互作用によって生まれる歴史だ。そして、このような歴史を伝えることができるのは教科書ではなく、やはり物語だ。その物語の主人公はこの世界の片隅に生きる平凡な市民だったり、遠い星から来た宇宙人かもしれないが、彼らの物語には全人類に共通するほどの普遍性を持ち得ることもある。
東西に分断されたベルリンを舞台にした天使と人間という異なる種族間のラブストーリーである本作にもそのような普遍性が備わっていると思う。

ヴィム・ヴェンダースのおかげで前よりも映画を観ることを肯定的に捉えられるようになったかも。
コミヤ

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