KnightsofOdessa

ベルリン・天使の詩のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
3.5
No.799[大天使は色彩豊かな人間世界の夢を見るか?] 70点

とりわけヴェンダースが苦手な母に睡眠導入剤として紹介されてから10年が経過し、その間特に睡眠に困ることがなかったので鑑賞することもなかったが、睡眠よりも先にマラソンのリミットに引っかかってしまったのが本作品である。そして、白状してしまえば、続編と言われる『時の翼にのって / ファラウェイ・ソー・クロース!』が観たいのである。アンリ・アルカンの浮遊するようなカメラワークから、天使の目線を共有する"ある天使の物語"であり、何億年も生きているであろう天使の目線から覗き見た人の心と記憶を意識の流れのように構成している。心に浮かんだ取り留めもない思考の流れをセリフにすると一つに選ばれてしまってちょっと陳腐であるのは否めないが、記憶を天使目線で意識の流れとして紡ぐのは天使目線をカメラで共有している本作品そのものの"思考"に合致している。同業者がこちらを向いて頷く図書館のシーンも良い。一箇所に集まりすぎだろ。

現代で映画化するなら"天使=透明"を示すような、例えば天使の奥にあるものを取ろうと手を伸ばして天使の体を手が通り抜けるみたいなチンケな演出が入りそうだが、本作品では天使が触れたものを二重露光で撮ることでその魂を抜き取ったような形になっている。逆に、ニワトリの羽で出来た"天使の羽"を外したマリオンがその背中を露わにするシーンでは、人間であるはずの彼女に羽を探そうとするかのような艶めかしさがあって良い。

モノクロからカラーになってから、ダミエルの世界は偶然と未知で溢れ始める。その世界観については納得だが、色が氾濫した世界はどうもわざとらしく見えて好きになれない。終盤のマリオンとダミエルの出会いのシーンなんて実に滑稽で、天使目線のモノクロ世界であればナレーションで済ませるマリオンの思考を全部口に出して語ってしまうのだ。いくら詩的にしたいからってやりすぎでしょ(とは思いつつ、ロープを一生懸命押さえるブルーノ・ガンツの笑顔にやられてしまう)。

ピーター・フォークのコロンボ芸は面白い。ナスターシャ天使が出てくる続編に期待。
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