netfilms

死霊のはらわたのnetfilmsのレビュー・感想・評価

死霊のはらわた(1981年製作の映画)
4.1
 若者たちは楽しい休暇を過ごそうとフロリダ州ジャクソンビルへと向かう。カップル2組とその姉の5人を乗せた車中は完全に浮かれ気分で、あえて誰も来ないような田舎町を独り占めしようと目論んだのがそもそもの誤りだったのだ。彼らが乗る車のショットと対向車のショット、何者かが森の中を這うような独特のカメラワークとの3つを交互にモンタージュした映像は素人丸出しだが、原始的な映画の面白さに満ち満ちている。主人公のアッシュ、姉のシェリル、恋人のリンダ、友人のスコットと彼の恋人のシェリーという5人のいかにも純朴そうな若者たちは、橋に足を取られながらも何とか森の中にある小屋を訪れる。だがそれは彼らの悲劇の始まりだった。当時21歳のサム・ライミと彼の撮影仲間だった今作の主演俳優ブルース・キャンベルとの、長編映画完成に賭ける思いが全編に溢れた今作は、血気盛んな若者たちを森の奥のロッジへと閉じ込める。地下室で彼らが発見した呪文を録音したカセットテープを再生した途端、恐怖映画はオカルト映画へと転移し、次々に一行に襲い掛かるのだ。

 恐怖に怯える彼らには逃げ場など残されていない。ロッジの周囲に立ち込めた殺気はいつどこから襲い掛かるのかわからない全方位的なもので彼らを錯乱させ、次第に自由を奪って行く。この張り詰めた恐怖に耐えられず森に逃げたものには更なる恐怖が待ち構えている。シェリルを力ずくで強姦する木々の描写は当時あまりにもセンセーショナルでトラウマ的であり、今ならもう出来ないはずだ。ついさっきまで愛していたはずの恋人が悪霊に憑りつかれ、変わり果てた姿になってしまう。このトラウマ的な哀れこそサム・ライミの真骨頂だ。愛を囁いていたはずの彼女をチェーンソーや猟銃でぶち殺さなければ自分たちが襲われるという極限の恐怖は戦慄すら覚えるほどで、映画が佳境を迎えれば迎えるほど夥しい血しぶきの量に埋め尽くされて行く。いかにも低予算映画ながらも、特殊メイクやクレイアニメに彼らが賭けた迸るようなエネルギーは原始的な映画作りへの喜びに溢れ、激しい恐怖の中に根源的な映画作りへの欲求すら垣間見える。まさに奇跡のような映画だ。
netfilms

netfilms