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インビジブルのnetfilmsのレビュー・感想・評価

インビジブル(2000年製作の映画)
3.8
 尻尾を掴まれたマウスが施設の中で解放される。マウスは小さな移動を繰り返し、やがて牢獄の中へ閉じ込められる。其の身体はみるみるうちに透明になり、ゲージにぶち当たったところで赤く干からびる。天才科学者であるセバスチャン・ケイン(ケヴィン・ベーコン)は、国家の極秘プロジェクトとして「生物の透明化とそこからの復元」を研究している。彼と研究チームは、動物実験において既に透明化を実現していたが、透明化した生物はその状態が長時間続くと精神に影響が及んで凶暴性が向上してしまい、復元も成功できる物では無かった。ある日のラボ、いつものようにパソコンの前で研究していたセバスチャンは突然数式を思い出し、助手で元恋人であるリンダ・マッケイ(エリザベス・シュー)にTV電話をかける。モニター画面でマシュー “マット”・ケンジントン(ジョシュ・ブローリン)の姿を隠し、電話に応じるリンダは元彼っであるセバスチャンを心から尊敬していた。遂にセバスチャンは透明化した生物を復元させるための薬の開発に成功するが、更なる名声を求める男はこの事を国家には報告せず、チームの反対を押し切り、自らを使って初となる人体実験を行う。デヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』のような人体実験、脳波異常、過剰な痛みを伴いながらも、セバスチャン自らが行った実験は成功したかに見えた。

 H・G・ウェルズの小説『透明人間』を原案とする物語は、ジェイムズ・ホエール監督による1933年版、小田基義監督の1954年版、ジョン・カーペンター監督の1992年版に次いで4回目の映画化となる。孤独な天才学者は最愛の恋人リンダを職場の同僚であるマットに奪われ、国家機密の秘密の実験だけが彼のプライドを支えていた。動物実験を何度も繰り返し、ようやく成功に漕ぎ着けたかに見えた実験だったが人間の場合はそう上手くいかない。並外れた野心を持ち、透明人間になった男だったが、3日で元に戻れるはずが10日を過ぎたあたりから徐々に精神が狂い始める。痴漢、覗きなど透明になった男の欲望が中二レベルなのはご愛嬌だとしても、監視カメラに細工をした男の欲望は徐々に暴走し、次第に国家の要人をも殺めるに至る。マッド・サイエンティストの暴走は研究チームの人々を次々と殺し、警備システムを破壊しリンダとマットを追い詰める。リンダの起死回生のあっと驚くアイデア、ラストのエレベーター場面の高低差のあるアクション、そして何よりもジェリー・ゴールドスミスの音楽が効いている。だが今作は北米では製作費を回収出来ずに失敗、世界観を酷評されたヴァーホーヴェンはハリウッドに見切りをつけ、失意のままオランダへ帰国する。
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