ぐっさん

ハイ・フィデリティのぐっさんのレビュー・感想・評価

ハイ・フィデリティ(2000年製作の映画)
4.2
オールタイムフェイバリットの1つ。

シカゴのレコード屋店主が過去の女性遍歴を振り返りながら、自分と向き合っていく物語。
公開当時観た時は自分はまだ10代で、シカゴのレコード屋という世界観と、ロッキングオン誌で推されまくってた、という経緯から、共感というよりは音楽を絡めた群像映画として楽しんだけど、30を越えてまた見返すと主人公ロブのどうしようもなさが身につまされて痛い…!

男はいつまでも子供で、盆暗仲間達(バリーやディック)と毎日つるんでは音楽や映画の話に時間を費やし、また物事の尺度もその知識量やセンスで測って、他人を見下しつつも自己弁護をはかってみたり…なんて嫌な奴ら…でも自分の中にもその部分あるよな、痛い…!というのの繰り返し。
とにかく愛すべきオタク達であり、結局これは…俺だ!となる。

女性遍歴を振り返っていくとき、時代に応じてロブのファッションも変わっていくので、「こいつもこいつなりにブレながらここまで来たのかな…」なんて思えるのもとても愛おしい。

ロブの部屋にはPAVEMENTやOf Montrealのポスター。お店はシカゴだからか、touch & goのステッカーやShipping Newsのポスターが貼られてたり、ディックはGreen Day好きの女の子にスティッフリトルフィンガーズを教えて付き合うようになったり、ロブはステレオラブ好きのライターに浮気したり…音楽小ネタはとにかく最高。「THE BETA BANDを5枚売るぞ!」とかは時代感じてノスタルジーにも浸れてしまう(観ると必ず聴きたくなる)

そして何より特筆すべきはジャックブラック演ずるバリーのラスト歌唱。2人の思い出の曲である「Let's Get It On」をサプライズで歌い上げる演出…オタクのどうしようもないけど愛に溢れた友情と、そのメッセージの伝え方に、涙が止まらない。

今見返すとロブの店の入り口すぐのとこに「Let's Get It On」のレコードが面出しで置かれてたことにも気づいて、やっぱロブにはローラしかいなかったんだろうなと最初から暗示されてた気分。

観客に向かって執拗に話しかけるロブには「こいつはどこまで自己弁護するんだ…」と思う部分もあるし、結果的にロブは好きな音楽で生計を立て、弁護士の彼女と結ばれるというなんともリア充な野郎なんだけど、どこか自分を重ねたりも出来る素晴らしいキャラクターなんだよな。

自分で作るミックステープには自分の人生が詰まっている。ほんとそうだった。そんな自分の青春も振り返らさせてくれる、どうしようもなく愛せる、何度でも見返したい作品。
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