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エイリアンのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

エイリアン(1979年製作の映画)
4.8

#エイリアン
リドリースコット監督の名作SF。今見ると、後世の作品の元ネタが多くて楽しい。

2021/10月にディズニープラスがリニューアルされ、エイリアンシリーズが観られるようになったので先月今月と久々に再観賞しましたが、改めて今見ても映画史に残る傑作といっていいと思います。


【1】スケール感のあるビジュアル
本作の公開年は1979年。スターウォーズ二作目『帝国の逆襲』の前年公開。
40年以上前の映画、舞台はほぼ一隻の宇宙船艦内だけなのに今見ても映像にかなりのスケール感がある。

1968~1973公開の『猿の惑星』初期シリーズあたりは今見るとかなり古い感じがするけれど、本作は同じ70年代の映画とは思えないほど高クオリティな映像。

冒頭、まず果てしなく長い船体であることがわかるようなカメラワークで、模型で作りこまれた宇宙船の外観をガーッと映してから艦内の絵に入るのが良い。
その後細部まで作りこまれた艦内を、廊下の長さや通路の分岐が把握できるアングルでじっくり見せる絵から始まるオープニング。
この時点でもうたまらなく不穏な感じとワクワク感があふれています。


【2】オリジナリティあるエイリアン
モノトーンで精細な画風で知られる画家のH・R・ギーガーが生み出したエイリアン。
人間の性器をモチーフとしたデザインのエイリアンは、恐ろしくも、見てはいけない物を見てしまった感を観客におぼえさせる点でも秀逸。


【3】迫真の女性主人公
最新作『最後の決闘裁判』(2021)始め、強い意思をもった女性主人公の物語を描く作品が多いリドリースコット監督。

冷凍睡眠装置から目覚めたクルーたちの中で唯一の女性飛行士があっさりと退場した『猿の惑星』(1968)等を見る限り、
70年代当時でも、女性の主人公がアクション含めて大活躍するSF作品はかなり珍しかったのでは。

リプリー役のシガニー・ウィーバーは本作が映画初主演。
彼女は身長182cmと長身で画面映えするし、迫真顔が素晴らしいので本作のようなSFホラーの世界観にとてもマッチしている。


【4】怪物映画の演出
117分の映画で、フェイスハガーが登場するのが34分/衝撃のシーンが56分/67分。怒涛の勢いとなる最終盤まで、メインディッシュをなかなか登場させずにたっぷりと引っ張る構成も素晴らしい。

『ジョーズ』(1975)『インクレディブルハルク』(2008)『シン・ゴジラ』(2016)etc
タイトルの時点でもう登場はわかっている怪物を、断片だけ見せながらひたすら焦らす定番手法を用いた作品はたくさんありますが、
怪物が「見えないこと」の演出効果のすばらしさは、本作と『ジョーズ』が双璧だと思います。


【5】近年の映画への影響
今回『エイリアン』は10年ぶりくらいに観たのですが、ここ5年くらいの映画で引用されてるなコレ!っていうシーンが多くて新しい発見がありました。
こういう古典的名作は10年に1回くらいでいいので、何かしらのタイミングで見返すと楽しいですね。

◆『スターウォーズ/フォースの覚醒』(2015)
レイとフィンがハンソロと出会った貨物船エラヴァナ、内部の雰囲気が本作の宇宙船ノストロモ号艦内にかなり似ている。
エイリアン同様に怪物ラスターが解き放たれてしまい、最終的に小型船に乗り込んで命からがら脱出するくだりが本作終盤の展開にそっくり。


『エイリアン』は基本最初から最後まで9割方宇宙船内だけで話が完結しているけど、途中途中で時々船体の外観を見せる絵を入れているのが良いところ。
フォースの覚醒のラスター騒動のシーンはあまり評判がよくない気がしますが、どうせ真似するならこの演出も真似すべきだったのでは


◆『ハン・ソロ』(2018)
スターウォーズのスピンオフ『ハン・ソロ』に出てきたレディ・プロキシマ。
体のラインが人体の胸を突き破って出てくるベビーエイリアンをかなり意識している気がする。


◆『アベンジャーズ/インフィニティウォー』(2018)
もうセリフでもろに言及されているけれど、エボニーマウとの対決で見せたアレ


◆『キャプテン・マーベル』(2019)
宇宙で活躍する女性主人公と共に登場するトラネコ。
キャプテンマーベル公開時にはまったく意識してなかったけど、あからさまにエイリアンオマージュだったと気付いた。

調べたところ、グースが原作コミックに初登場したのは2006年ごろと最近のキャラクター。原作では名前が「グース」ではなく「チューイ」とのこと。
 ※言うまでもなくスターウォーズからの引用である

さらにコミック内では100個以上の卵を産むエピソードがあるというのだから、何が引用元なのかは察しがつく。

そこを意識した上で、改めて見ると猫のグースを抱えるブリー・ラーソンのルックスはなんとなくジョーンズを抱えるシガニー・ウィーバーに似てるような気がしなくもない。


◆『マンダロリアン』(2020)
シーズン2の2作目(chapter10「乗客」)は後半全体がエイリアン/およびエイリアン2の引用満載。次のエピソードでグローグーの顔にフェイスハガーよろしくタコ型モンスターが貼りつく絵も登場


◆『ザ・スーサイド・スクワッド/極悪党集結』(2021)
・人の顔にはりつくスターロは完全にフェイスハガー
・イドリス・エルバ演じるブラッドスポートのマスクは明らかにエイリアンを意識したデザイン

こうしてみると、今50代くらいの映画監督たちに、エイリアンは大きな影響を与えたんだなと感じます。


【スコア】
★4.8で。

本作を観賞するのは人生でたぶん3回目です。

最初に観たのは小学生の時。SF映画好きの父親に誘われて見て、とにかく怖かった記憶しかない。
その翌週くらいに「2」を見せられて泣き叫んだ想い出。子供心に2の方がとにかくトラウマで途中逃亡しましたが、1はビクビクしながら一応完走しました。

そのせいで本シリーズにはずっとトラウマがあり、だいぶたって成人してから『プロメテウス』(2012)公開を機にやっと2回目を観れました。この時も心のどこかに不快感と恐怖感があった。
キルビルとかバトルロワイアルとかで血がぶわー出てたりする映画は好きなくせに、エイリアンだけはダメな成人男性という謎。

そして今回が3回目。今ではようやく冷静に観られます。
小さい子供を持つみなさん、小学校低学年くらいまでは安易にホラー系の作品を子供に見せちゃいけないです。レーティングって大事。ダメ、ゼッタイ


とはいえ改めて観ると70年代のSF映画としてはスターウォーズに並ぶほどのクオリティ。
スケール感/キャラクターデザイン/物語の間とテンポ/スリルある演出etc
21世紀の今見ても色あせることのない名作です。
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