サマセット7

シンデレラのサマセット7のレビュー・感想・評価

シンデレラ(1950年製作の映画)
3.8
ディズニーアニメーションスタジオ製作の12番目の長編アニメーション映画。

[あらすじ]
父母を亡くした美しき娘、シンデレラは、意地悪な継母と2人の義理の姉の下、召使いのような生活を強いられていた。
ある日、お城からお触れがあり、王子の結婚相手を募るため、パーティーが開かれるという。
継母と義姉からパーティーの参加を妨害され、涙にくれるシンデレラの前に、どこからともなく、魔法使いの精霊が現れ…。

[情報]
白雪姫で大ヒットを記録し、その後もバンビやダンボなどの名作を作り出したものの、売上的に低迷して巨額の負債を抱えたディズニーアニメーションスタジオの、乾坤一擲の作品。

今作は、290万ドルの予算をかけて1950年に公開され、大ヒットとなり、ディズニーを文字通り復活させた。

今作はウォルト・ディズニーが最も好きな作品として挙げた作品として知られる。
評論家から、現在も高く評価されている作品である。

原作は、シャルル・ペローによる同名童話。
今作では、アニメオリジナルの動物キャラクターを多数出演させ、異なる味を出している。

[見どころ]
トムとジェリーを思わせる、動物たちの攻防!!
継母の、いやらしさ満点の挙動!!
目が怖い!!!
義姉、アナスタシアとドリゼラ!
ここまでやるか!!
クライマックスは、名曲ビビデバビデブー!!!
ディズニーの魔法、ここにあり!!!!

[感想]
まさか、ここまで、動物アニメだったとは!!

みんなご存じのメインストーリーはさておき、とにかくアニメオリジナルの動物たちの攻防が上映時間の多くを占める。

シンデレラは優しい娘で、家に住む馬、犬、ネズミ、鳥たちにエサをやったりして面倒を見ている。
そのため、4匹のネズミたちを中心に、彼らは、シンデレラが城のパーティーに行くためのドレスを繕うために、大変な努力をするのである。
しかし!!!
その前に立ち塞がる影!!!
そう!!
継母の愛猫、ルシファー!!!(??)
その狡知!!
恐ろしい爪!!!
奴から逃げ切らないと、ドレスは作れないのだ!!

…何のアニメを見ているのだったか?
という展開だが、動物たちの活躍は、これだけでは終わらない。
有名なカボチャの馬車のシーンでも、ガラスの靴が合う娘探しのシーンでも、動物たちは主人公であるシンデレラ以上に活躍する。
アクションという意味では、もはや主人公は、動物たち、特にネズミたちであり、メインヴィランは、悪猫、ルシファーである。

白雪姫もそうだったが、初期ディズニー作品は、原作の童話とは別に、ディテールを膨らませて、アニメオリジナルのサブプロットを走らせる特徴があるように思われる。
今作の動物たちは、その典型であろう。

ネズミとネコの追いかけっこは、動きを楽しむアニメーションの魅力たっぷりで、何回見ても面白い。

もちろん今作のクライマックスは、魔法使いによる、カボチャの馬車の創造シーンだ。
アニメーションの面白さはもちろん、ビビデバビデブーの歌の威力!!!
白雪姫のハイホーと並ぶ初期ディズニーの名曲であろう。

個人的に、継母と2人の義理の姉たちの描写のイヤらしさが印象に残った。
現代のルッキズム批判論者からはクレームがつきそうだが、彼女らの「醜さ」の表現は、魂の穢れ、という理解でいいのではなかろうか。

[テーマ考]
原作シンデレラのテーマは、苦難を耐え忍んでいれば、いずれは報われる、だから希望を捨ててはならない、ということかと思う。
シンデレラストーリーという言葉を引くまでもなく、成功物語の元型の一つであろう。

今作では、アニメーションオリジナルの動物たちを登場させ、シンデレラに代わって奮闘させることで、よりテーマを明確にしている。
つまり、他者(動物たち)に優しくした者(シンデレラ)の元には巡り巡って、幸福が訪れる、すなわち因果応報ということだ。

ところで、今作のシンデレラと、近作のラプンツェルを比較すると、時代の違いが感じられて面白い。
シンデレラは基本的に不幸に遭うと嘆いているだけの受動的なヒロインだが、ラプンツェルはフライパンを武器に戦い、長い髪を振り回して大冒険をするのだ!!
王子様なんぞに「幸せ」にされてたまるか!!というのが当世風というものだろう。
私は、圧倒的にラプンツェルの方が好きだ。

[まとめ]
ディズニーアニメのクラシック作品を代表する大ヒット作。

なお、2002年にはシンデレラⅡ、2007年にはシンデレラⅢという続編がOVAで作られている。
また今作の実写版も2015年に公開済みだ。
機会があれば、比較のため観てみたい。