フレスコの傘

ピクニックatハンギング・ロックのフレスコの傘のレビュー・感想・評価

3.5
『物事は皆定められた時と場所で始まりそして終わる』

1900年2月14日、聖バレンタインデイの日。寄宿制女子学校の生徒たちはハンギング・ロックと呼ばれる岩山へとピクニックに出掛ける。柔らかな日差しが射し込む中少女たちは微睡んでいた。しかし3人の少女と引率の教師一人が忽然と姿を消してしまう…。

本作はジョーン・リンジーの小説が原作であるが、原作自体が実際に起きた事件を基に書かれたものなのか、否かという論争が少なからずあったようなのである。そのため映画もフィクションとノンフィクションとの境目が非常にぼやけた作風となっており、我々はその間を漂うことしか許されない。要するにこの物語には結末が存在しないのだ。

話自体は岩山で神隠しに遭う少女たちという至ってシンプルなものだが、そのシンプルさ故に怪奇性が後を引く。そしてそれを後押しするかのように白昼夢のような映像と白いレースのドレスを纏った少女たちの美しい姿が映し出されてゆく。といっても少女たちは早い段階で失踪するためどうしても名残惜しさを感じてしまうのだが、これは致し方ないだろう。ああ、12時を指して止まったままの時計のようにボッティチェリの天使と形容される彼女たちとこのまま微睡んでいたい…と願いつつもこの場所はあまりにも浮世離れしていて如何わしい。

人が失踪する時、必ず何らかの理由があるはずだ。しかし本作ではその理由が最後まで明らかにされない。それでもハンギング・ロックという場所で消えたという事実だけで十分ではないだろうか。首吊り岩という名前からして不吉なのだから。不吉な名前に戦慄を感じながらもその姿にはどこか聖域のような雰囲気も持ち合わせている。彼女たちは岩山に魅せられたのかそれとも…。完璧な結末のない映画こそ最も恐ろしいのではないかと私は考える。