やま

πのやまのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.5
ジェットコースターのように男の数学に狂わされた人生・頭の中を映し出していく。

この速すぎる映像は「鉄男」を思い出させるんだけれど、あまりにも狂っていた。男が追われるそして、追うシーン描写は怖さすら感じた。脳のシーンが特に。その映像を煽るようにドラムと奇怪な音楽が鳴り続ける。ドラムがこれほどの効果を発揮してるのは、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の息子を抱える父親のシーンが印象的なのだけど、これがまた上回ってくる。
ドラムの音が好きだ。


無数のカットによって男が狂わされている様子を描く。「レクイエムフォードリーム」の映像感覚はもう既に彼の中で完成していたのか。

216桁の数字が彼を痛めつける。そして彼は完成に近づいた。それは、あまりにも危険すぎたのがわかる。そして彼は狂いに狂い、元凶の脳を破壊する。この描写は僕の大好きな漫画の「ホムンクルス」でもあった。時に脳は、人間の本体をも上回る。

空を舞う鳥、タバコの煙が空気に混じる、コーヒーに混ざるミルク、そして美しい海、全ての自然が数式を持っている。数学は自然の言語なんだと。

あまりに好みすぎた映像、音楽に惚れた。ザラザラの何かの上で流されているかのようなモノクロの映像。こんな力のある映像を撮ってみたいとも思わせられた。最高の一品だった。
やま

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