こたつむり

πのこたつむりのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
3.2
★ 0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34…

ダーレン・アロノフスキー監督作品。
ということで再鑑賞しました。レンタルされた頃(2000年)に観た印象は「すげー、ぶっ飛んだ作品だなあ」という感じでしたが…うん。それは今回も変わりませんでしたね。

特に前半の期待を煽る展開は見事。
「世の中は全て数学で表すことが出来る」なんて言葉は、知的好奇心を激しく揺さぶります。

しかし。
その期待もむなしく、物語は進むにつれて失速していきます。主人公は216桁の数字に取り憑かれるのですが、その向こう側にあるのは妄執。折角、積み上げてきた理知的な雰囲気がアリを踏み潰すかのように壊れていくのです。

やはり、彼の行く道はひとつ。
二次元の式を三次元に展開するべきでした。人間の限界として、記録が二次元化してしまうから真理が見えないわけで、それを三次元モデルにすれば「株価が上下変動する」理由のひとつくらいは分かったかもしれません。

いや、欲を言うならば四次元化が理想。
時間軸も取り入れるべきなのです。確かに真理はシンプルであることが重要ですが、そのシンプルな式を積み重ねて出来上がったのが現実。三次元で理解できるわけがないのです。

そもそも視覚情報を信じている時点で前提が違うかもしれません。二進法ではなく十六進法でもなく四十八進法なのかもしれないし、明日の株価は上がっているか下がっているかそのままか…だけではなく、破裂して宇宙の深淵に辿り着いている可能性もゼロではないのです。

おお。神様。あなたは太陽。
だから、直接見てはいけないのです。人類如きが真理に到達しようなんて恐れ多い!偶さかか!偶さかか!イカロスの羽のように焼け焦げてしまえばいい!

…えー。そんなわけで。
価値観が揺らいでいく物語。この感想も少しだけ本作を再現しましたが…如何でしたでしょうか。え。よく分からない?うん。僕もそう思いますよ。でも、そういう物語だから仕方が無いのです。

それにしても、本作はモノクロ映画。
デヴィッド・リンチ監督もクリストファー・ノーラン監督もデビュー作はモノクロでしたが…「予算が安い」という理由以外に白黒の世界観には何か惹きつけるものがあるのでしょうか。もしかしたら、それが映画の“真理”なのかもしれませんね(上手くまとめた)。
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