Zhivago

ハゲタカのZhivagoのレビュー・感想・評価

ハゲタカ(2009年製作の映画)
4.6
テレビ朝日でドラマ版を復活させるというニュースを聞いたら、そういえばこれを観ていたことを思い出した。
地上波ドラマは滅多にみない自分がドラマ版を含めて貪るように観た。
あまりにも脚本がすばらしい。勃興する中国、サブプライムで奈落に落ちたアメリカ、その間で迷いつつも過去の失敗に学んだ彼ら日本人たち。
それにしても、大森南朋と玉山鉄二が凄まじい。志賀廣太郎も素晴らしい。他の作品ではそうでもないのに・・・。となるとやっぱり大友監督の腕なのかな。

金融経済のその時代性というのもよくよく切り取る作品だから、きっと今観てもあまり意味がないのかもしれないが、その当時(サブプライム後)を知るにはきっと役に立つに違いありません。

かくいう自分自身、リーマンショックでは仕事に影響を受け、生活が変わるきっかけになりました。すくなくとも私レベルの人間はグローバル経済の中では吹けば飛ぶような虫けらに過ぎないのです。もがいたって努力したって全く歯が立ちません。グローバル金融が一見かかわっていないように見えて、殺虫剤で瞬殺されるがごとし、です。
正しく生きるだの努力するだの汗を流すだの人間性を大事にするだののモラル的な正しい生き方も、大きな社会経済の潮流の中で一定の前提があって初めて保障されるものに過ぎないのです。
だから、日本人の社会経済的リアルを描くとすれば、この作品のアプローチは一つの方向性だと思うのです。

そうだ!考えてみれば、サブプライム危機は多くの定住居のない人々を生み出したのでした。最近観た「フロリダプロジェクト」が描くモーテル暮らしの人々を生み出した要因の一つなわけでした。
月日が経つというのは怖いことですね。サブプライム危機のときはもはやこの世の終わりかというムードさえありました。今もその後遺症に苦しんでいる犠牲者はたくさんいるし、自分も悪影響を受けたのに、ネガティブなことは忘れてしまうものなのですね。だから人間はやっとでも前向きに生きていけるのでしょうが、忘れてはいけないこともあるよねと考え直しているわけです。「ハゲタカ」と「フロリダプロジェクト」が偶然つながって。
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