ヒノモト

鬼畜大宴会のヒノモトのレビュー・感想・評価

鬼畜大宴会(1997年製作の映画)
3.6
「私の男」や「海炭市叙景」などの熊切和嘉監督の初監督作品。
大阪芸大の卒業制作として制作された自主制作映画で、断片的には知っていたのですが、1990年代日本映画の特集上映にて、初めて映画館で観ることができました。

連合赤軍によるリンチ事件をモチーフにスプラッター的要素を鋭く表現した作品で、描きたいところにまっすぐに向き合っていることが何より美しいし、学生運動当時の世界観を限られた空間の中で尖った表現として、正しいと思います。

物語中の仲間たちの精神的支えである組織の首謀者が獄中で自殺したことが判明してからの残された仲間たちの薄氷の関係性に亀裂が入り、一気に崩壊していく中盤まではいいのですが、ピークがそこにあって、それ以降は台詞自体がほとんどなくなってしまうところもあって、感覚的に長く感じてしまいました。

ただ、序盤の流れに対して、思想を受け継いでいく気迫の高まりと崩壊していく上下関係を積み重ねていく展開としては、必要な時間であったと思う分、終盤に何か気持ちを動かされる要素があると良かったと思いました。

細かい指摘は置いておいて、スタッフの中には現在監督も脚本家をして活躍されている方もいて、荒さはあるものの長編という形に残るものを残せて、そこから飛躍していることを考えると、たとえそれがグロい表現であってもフィルムに刻まれることの尊さを感じてしまいます。
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