深獣九

鬼畜大宴会の深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

鬼畜大宴会(1997年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

本作は熊切和嘉監督の卒業制作。だからというわけではないのだろうけど、その熱量は凄まじい。脚本やカメラワークなどは荒削りだが、それを上回る力がある。
注目すべきは執拗さ。とにかくねちっこいのだ。
木に縛りつけた男を蹴り続ける、命の危険を感じて仲間割れする姿を嘲笑う、撃たれて吹き飛んだ顔に爪を立て撫で回す、女の股間をナイフでえぐりショットガンを突っ込んで吹き飛ばす、気が触れた男を木材で殴り続ける。
暴力や猟奇すべてがネチネチとしつこく容赦無い。逃走シーンもそう。もうやめてくださいと懇願したくなる。

グロいシーンもけっこうな出来なので、ホラー映画に分類されるかもしれない。提出されたこれを教員はタイトルから判断し、あぁホラーですか悪くはないですが月並みですね、と評価するかもしれない。私も学生が作った映画を観たことはある。それなりに面白かったが、でもそれなりだ。だが『鬼畜大宴会』は違う。そんじょそこらの素人作品ではないのだ。教員も度肝を抜かれただろうな。

エンドロールの役者紹介で、死んでる姿を映すのはちょっとかわいそうだし頭おかしい笑

グロいのはビジュアルだけではない。人心や狂気の類いも不気味極まりない。舞台は学生運動全盛の時代で、登場人物も活動家。彼らのことはほぼ知らないが、思想でつながることの恐ろしさは強烈に伝わってきた。ちょっと考えが異なればもう敵で、敵は殺してしまえとなる。戦争犯罪国家やカルトを彷彿とさせる。というか、同じものだったのだろうな。自分の息子がそうだったら、と想像したら震えが止まらない。

とにかくアツい、グロい、気味悪い、気持ち悪い、笑えない作品。ほとばしる映画魂をぜひ感じて欲しい。
深獣九

深獣九