LudovicoMed

影の軍隊のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

影の軍隊(1969年製作の映画)
3.6
メルヴィルプレゼンツ、沈黙のイングロリアスバスターズ。

ゴダールの『勝手にしやがれ』劇中でインタビューを受ける監督ことジャンピエールメルヴィルによるナチスドイツ占領下に暗躍したレジスタンス映画。メルヴィル監督はどうやら自らがレジスタンス運動に参加してた過去があるらしく、いわゆる実体験ベースな恐ろしいバイオレンス、狂ってくモラルが拝めそうな作劇を感じた。

ところが本作、ひたすら沈黙を死守しドライに状況が語られる。
ノワール好きなメルヴィルらしく地味な描写が淡々と、グレー系色に統一された映像美なんかにも陶酔しながら過酷なレジスタンス活動が語られる。
しかし次第に、その"沈黙"こそに神経がすり減らされ、突発的にやってくる死はアッサリと済まされる。
つまりメンバー全員が死の覚悟を持つので誰が殺されるか、全く予想がつかない異様な怖さが漂うのです。

そして密告、裏切り、拷問をじっくりと描きミクロの観点でレジスタンス達の恐怖を紡ぎ出す。これこそがメルヴィルの経験したリアルな実態だったのだろう。
生死の分かれ目が瞬時に入れ替わる戦場とは違い、本作の印象的な『死の瞬間』を引き伸ばされる絶望感。
特に死刑場のくだりで、あえて死を見せない凄惨な演出にはハッとさせられました。

レジスタンスという一見、聞こえが良さそうな反政府活動に置いて、実はボスのためなら命を差し出す、"ウォーボーイズ"さながらな精神でイメージがガラッと変わってしまう作品でありました。
LudovicoMed

LudovicoMed