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恋愛睡眠のすすめのtsのレビュー・感想・評価

恋愛睡眠のすすめ(2006年製作の映画)
3.6
なんて変な映画なんだろう、って最初は正直思った。手作り感満載のアニメーションや小道具。夢の中でのぶっ飛び感。これ以上ないほどの主人公の頼りなさ、滑稽さ。なのに、とても温かくて、懐かしくて、甘酸っぱくて、童話を読んでいるような気持ちになり、気づいたら、心の底から主人公に共感していた。

自分も夢想家なのだが、なので、この作品中に何度も「ああ、わかる、、、」というエピソードがあった。とくにこの作品の中核にある、睡眠の中で恋愛をする、というコンセプトはまさにそれで、たとえば片思いをしているとき、夢の中では告白もできるし、いかようにも距離を縮め、両思いになれるし、幸せな気持ちになることができる。なので、寝る前はベッドの上でそんなシチュエーションを具体的に夢想しつつ、このまま眠りに落ちて、夢の中であの子に会えますように、と祈りながら目を瞑る。たとえ夢を見られなかったとしても、それこそが恋している間に感じることのできるこの上なく幸せな時間だった。きっとそういう人は自分のほかにもいると思うし、そんな人がこの映画を観ると、主人公の滑稽な様子を見て、恋とはそもそも滑稽なものであると再確認し、それでも本人にとっては一生懸命で、そんなひたむきさが、手の込んだ手作りのアニメーションや小道具を通じて、恋することの美しい側面の一つとして訴えかけてくるのだと思う。

それにしてもステファンが恋するステファニーも彼に負けず劣らず個性的。でも、ステファンの個性的すぎる創造力・想像力が彼女と共有・理解されていく様子は心からうらやましく感じた。趣味でも何でも、好きな人とは共有したいし、それが特にユニークな個性に紐付くものだとしたら、それを共有できる人との出会いはまさに運命に感じてしまう。

とてもあたたかく、コミカルで、実ろうが実るまいが、恋することの幸せを教えてくれる、そんな映画だった。
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