ヨウジヤマモトの服はなぜ黒いのか?
その真相に迫ったドキュメンタリー!というのは冗談としても😅、ちゃんとなぜ黒なのかを明確に答えてくれている。
(ネタバレ案件かと思うので伏せておく)
ニューヨークに1号店を構えた翌年に、ヴィムヴェンダースは本作を撮り上げた。
監督は時折「え、それ聞いちゃうの?」ってとこまで斬り込んでいたけれど、よほど信頼関係が出来ているのか、服を作ることになったきっかけ、世界と日本を股にかけて活躍することの葛藤や、メンズとレディースの取り組み方の違いなど、まあまあ核心とも言うべき本音をさらけ出して語っている(ように見える)。
いきなり彼のコンセプトであるモダンとクラシックの融合、伝統と革新のミクスチャーに触れることができる。
「僕は二つの要素を満足させる技術を持っている。十分な新しさと、永遠のクラシック。ファッションで思いついたのは自分が最初」と、大きく出たなw
ヴェンダースのほうも負けじと35mmフィルムのアイモとビデオカメラを使いこなす。山本を意識したのか、偶然か。どちらにしてもこの2つを画質の面でもレイアウト的にもうまくミックスしていて映像として楽しめるし飽きさせない。
単なるインタビュー映像で終わらせないアート性が80年代的で面白かった。
ただ、一貫して感じるのは、あんなにアヴァンギャルドなファッションを繰り出していながら、山本がエキセントリックなアーティストではなく、あくまでも「服職人」であることだ。
色を一切使わない「黒」へのこだわりも、アシンメトリーなデザインも、生地の質感を生かしたカッティングも、すべて仕立て屋としての考えに基づいている、と思えた。
盗用されることは心配しないのかという問いには「イッセイミヤケのデザインを盗んでも同じ裁断はできない。彼らには彼らの裏打ちされた技術があるから真似できない、もし真似ても模倣にすぎない」みたいなことを答えていて、なるほどこれは職人ならではの感覚だと感動する。
引用ばかりしていてもキリがないので、もうひとつだけ気になったトークを。メンズとレディースの作り分けについて語っている中でこんなことを言っている。
「男性は自分の想像や観念の中で生きている。
女性は現実の生活の中に生きている。」
なるほど!と膝を打ってしまった。腫れ上がるほどに笑笑
元々、山本はレディースファッションを手がける時に「男を喜ばせるためのお人形さんのような服は絶対に作るまい」と言っていたのを読んだことがある。
ジェンダーレスとかユニセックスとかそういうのではない。女性が女性らしくあるために何ができるか?そうした覚悟を持ってクリエイティブに明け暮れたのではないだろうか。もちろんその中には非対称や歪み、違和感といった要素を忘れない。要するに「毒」だ。
実際本作の中でもメンズはどうでもいいと語っており(汗、アディダスのY3しか着たことないボクとしては、自分自身がヨウジヤマモトの黒を着たいというよりは、それをサラリと着こなしている女性とお近づきになりたいよね、と思った次第。
ま、遠い夢だけれどw