masayaan

孤独な場所でのmasayaanのレビュー・感想・評価

孤独な場所で(1950年製作の映画)
4.0
『大砂塵』の中古VHS購入記念事業、ニコラス・レイの小特集! 冒頭、夜の街をシックに彩る車影を見て、『暗黒への転落』の平凡さは、それがセットと屋内の設定のみで作られた室内劇だったことに起因するものだったのだと、ふと納得する。『夜の人々』の冒頭の、あの名高いヘリコプター撮影に比べれば、こちらもいささかダイナミズムに乏しい感はあるが、ニコラス・レイの4作目『孤独な場所で』には、人が呼吸できるだけの酸素は用意されている。

題材とすれば、ヒッチコックの『疑惑の影』あたりの作品を彷彿させる殺人絡みのサスペンス。『三つ数えろ』でのマーロウを彷彿させる、飄々としたシナリオ・ライターの男をハンフリー・ボガートが怪演。彼にかけられた殺人容疑のアリバイを証言しに来た女(『復讐は俺に任せろ』で重要な役割を果たすあの人!)とロマンスに落ちるのだが、ともに暮らすようになって分かった男の病的なまでの易怒性、偏執性、暴力性が、彼女に「やはりこの人が殺ったんじゃ・・・」というパラノイアとなってまとわりつく。

見る人を特別なフィーリングへと誘う傑作ではないが、この監督に寄せる期待の水準からすれば、実に手堅い一本だと思いました。もちろん、海外の批評ではほぼ満点評価のクラシックなので、必見は必見です。
masayaan

masayaan