社会に適応できないままで高校卒業を迎えた少女(ソーラ・バーチ)が、音楽オタクの中年男性(スティーブ・ブシェミ)に惹き寄せられていく。ダニエル・クロウズの同名コミックを映像化している、ラブ・コメディ。
「ゴーストワールド=思春期の日常性」という解釈を用いながら、暗中模索、陰々滅々とした通過儀礼を綴っている作品。映画的演出にハイセンスが光っており、モハメド・ラフィ歌唱によるインド映画のサントラがフィーチャーされている。
早口で持論をまくし立てる、音楽オタクのスティーブ・ブシェミに共感性羞恥が刺激させられる。一方、友人役のスカーレット・ヨハンソンは、普通に色っぽいネーチャンのため、サブカル女子に見えないという難点あり。
本作で描かれているテーマは、完全に「書を捨てよ町へ出よう」の系譜。かくいう筆者も、いまだに「ああ、今の自分はゴーストワールドに入ってるなぁ」と感じることがある。これは墓場までもっていくシンドロームなのかも知れない。