こたつむり

ゴーストワールドのこたつむりのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
3.9
★ 空は青く突き抜けても、心は曇天模様

そうなんですよ。
人間は生まれる場所を選ぶことが出来ないんですよ。だから、生まれた場所に縛られる若い頃は、違和感ばかりでも不思議じゃないんですよ。

それに経験も足りないんですよ。
自分が何者かなんて判るはずもなく。
透明の膜に包まれたかのような断絶した気持ちで、夜な夜な天井のシミを数えてしまうんですよ。

また、満ちることもないんですよ。
先進国に生まれれば食に困ることは少ないですし、飢餓も満腹も分からないままに日常をのんべんだらりと過ごし、カレンダーが捲られることが自身の命を縮めていることと同義だと気付かないんですよ。

そう。それが僕たちの青春。

そして、その中途半端な状況を受け止めて歩きだすのか。それとも新しい何かを探すのか。それは十人十色であり、その多様さも青春。本作はそんな時期を見事に切り取った作品でした。

だから、煌びやかさと消化不良でモヤッとした感覚が同居しているのです。特に注目なのはソーラ・バーチ演じる《イーニド》のファッション。不安定な彼女を表現するかのように、場面毎に洋服が変わる様は鮮やかでした。

また、その洋服では隠しきれない若さ。
これがね。ぷりぷりで弾けそうなのです。
調べてみると撮影時は実際に18歳だったようで、まさに彼女の青春をフィルムに刻んだと言っても過言ではありません。とても素晴らしい配役でした。

まあ、そんなわけで。
澱む想いを抱えた十代を捉えた作品。
贔屓目に言っても傑作であることは間違いなく、鑑賞するタイミングで捉え方が変化するカメレオンのような物語なので、何度観ても面白いと思います。

ちなみに友人役はスカーレット・ヨハンソン。
なるほど。この頃から“モテ役”だったのですね。

でも、個人的には《イーニド》のほうが好み。
何しろ、僕も彼女と同じ側の住人ですからね。だから、スティーヴ・ブシェミが演じる中年男が彼女に振り回される姿は我が身を観るようで…嗚呼、イタいなあ。
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