ゆん

スワンズソングのゆんのレビュー・感想・評価

スワンズソング(2002年製作の映画)
3.8
二人の女子高生が、学習ノートに遺書を残して屋上から飛び降りた。
恋愛関係でもなく、ままごとのように手を繋ぎ、キスをする二人。その瞬間画面は赤いライトで照らされ、口移しされた虫が蠢く。
主人公の妹が、黄色いレインコートを着た姿で、惨殺死体で発見された。バレエ教室の帰りの事だった。そこから、次々と不可解で残忍な殺人事件に見舞われる。
コーチやクラスメイトからの虐め、援助交際、大人達の無遠慮で独善的な態度。そのどれもが、妹を助けられなかった罪悪感を感じる主人公をより一層悩ませる。
心の闇を感じるワードの数々は「集団自殺クラブ」を想起し、犯人の背格好やストーリーの骨格は「ザ・ブルード怒りのメタファー」を強く感じさせ、役者の異常なまでの無表情はホラー漫画を意識しているのか、また違う目論みなのか。それらを全体で観ると斬新で前衛的ともとれる画期的な映像作品となっている。
女子高生同士の、どろどろとして暗い青春映画に見せかけているが、真のテーマは中年女性の心の闇だ。若く美しい者の生ぬるい苦悩を、おばさんになった大場久美子がぶった切っていく様が痛快!熟成されすぎた闇は狂気へと変わり、狡猾さや欺瞞だけを習得して、幼いまま人は老いる。
自分の娘がストレスで発狂しそうな事態に、さらなる発狂をしてみせて娘をドン引かせ正気に戻す、というアクロバットを見せた大場久美子さん。拍手を贈りたい。
ゆん

ゆん