みきちゃ

フロスト×ニクソンのみきちゃのレビュー・感想・評価

フロスト×ニクソン(2008年製作の映画)
4.5
「ペンタゴン・ペーパーズ」にグッときて「大統領の陰謀」を観て「ザ・シークレット・マン」を観たら、いよいよ「フロスト×ニクソン」の流れ、あると思います。

アメリカ合衆国第37代大統領ニクソン。先に見た三作では直接的に描かれることもなく、各映画の主人公達の大いなる敵ポジに徹してきた、腐敗しきってるらしいホワイトハウスを率いたラスボス。なんか緊張した。まあラスボス化したのは自分で決めて見てきた順番のせいでしかないけれども、それでも緊張した。世話ない笑

ウォーターゲート事件の翌日からニクソン辞任当日までを、当時のニュースをつぎはぎにして見せる冒頭。アメリカは怒っていた。明かされない真実に。謝らないニクソンに。

政治の表舞台に返り咲くことを諦めていないニクソン。そして、アメリカンドリームを掴むことを諦めていないイギリス人のテレビ司会者。対決までの日々が描かれるうちに、二人がある種同じ穴の狢であることが見えてくる。

政治映画なのはもちろんのこと、同時にギャンブラー映画で、格闘映画で、心理戦映画でもあった。ピリピリしながらめちゃくちゃ面白かった。

フロスト側の準備シーンには笑った。散々いじり倒されるニクソン。フロスト×ニクソンのインタビュー番組を報じるワシントンポストの記事朗読からの "Can I be Deep'Crack'?" は最高。

ニクソン側では、戦慄のニクソンジョークが炸裂。ブラックすぎて私の中で時が止まった。

インタビュー収録が始まってからのニクソンの貫禄たるや。核心に迫ってくところでは息をのんだ。ニクソン役のランジェラさんがすごすぎた。ニクソンが悪いとか良いとかは別にどうでもいい。ただ、政治家に相応しい要素の1つは、ただの詭弁であろうがなんだろうがいかに自分の言動を自分の中で正当化して揺らがず信じ込めるかということで、その意味ではニクソンは本当に優秀だった。敵がこんな本物だったからこそ、FBIもワシントンポストもみんな本気出して戦ってきたんだなあ。

役目をきっちり果たしたサムロックウェルと、素敵な役をもらってたケヴィンベーコン。かっこよかったなー。

映画の後に、実際のフロスト×ニクソンのインタビューを見た。ウォーターゲート事件の回だけでもすんごい見応え。いまだに史上最高視聴率をキープしてるインタビューなだけあって、そのまま映画で使われるのも納得なハイクオリティ発言が続く。ニクソンはあの超狸な話術のせいで、映画ではめちゃくちゃカットされてた笑。正々堂々ぽくはあったものの、ランジェラさんほどの演技力がなかったよねえ。そこはまじで残念。フロストのほうは、対比を際立たせるために映画用にかなり脚色されたキャラっぽかった。ニクソン自らがワシントン・ポストとディープスロートに触れてきて、"ウッド・スタイン"コンビ著の話題本を読んでることがわかるし、ベンブラッドリーの名が出るし、背水の陣でもリップサービスをする余裕があり…やっぱあっちの政治家はべしゃりが桁違いに上手い。聞き入っちゃう。ニクソンが辞任後もワシントン・ポストを読んでたことに個人的に萌えた笑。

今世紀に入り、フロストもニクソンも急逝してしまった。アカデミー賞の候補になった5部門のうち脚色賞だけでも最優秀をとってほしかったなあ。
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