冷蔵庫とプリンター

キング・コングの冷蔵庫とプリンターのネタバレレビュー・内容・結末

キング・コング(1933年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 想像以上に合成、ストップモーション等視覚効果がよく出来ており、意外にも恐竜が沢山出てきてとても面白かった。前半部分は映画作りの映画でもあり「美女と野獣」とりわけ「美女>野獣」の主題にメタ的に言及している点が興味深い。つまり本作には「どんな怪物も美女に対しては無力だ」というテーマを掲げた映画内映画があり、本作のテーマも同様であるということがあらかじめ伝えられる。
 髑髏島での女優救出シークエンスは、古代のゴリラと近代ゴリラ(こう書くと某文豪が頭に浮かぶが)がメスを取り合う様相を呈しており、好色そうで残忍な巨大ゴリラの造形は、実にプリ・コード期らしい。実際このコングは女優を連れ去ったあと、はぎ取った衣服の匂いを嗅いだり、身体を弄ぶ仕草を見せる。そもそも撮影クルーを乗せた船に女性が一人という設定も、ロマンスというよりはセクシュアルな要素を本作にもたらしている。
加えてこのコングは残忍な殺戮が目立ち、人間を食べる(/飲み込む)描写は一切ないにも関わらず、掴んだ人間を口に入れ咀嚼して殺している。そのほか踏み潰したり、高いところから落としたり、さらには止める必要のない電車を停止させ乗客を痛めつけたりもしていた。
 女優救出の後、コングを生捕にしてニューヨークへ連れて帰ることを監督が提案するシーンには、人間のエゴイズム・尊大さが描出され、なかなか含蓄があった。ニューヨークに連れてこられたコングは脱走するのだが最後にはエンパイアステートビルの上で戦闘機に撃墜される。このラストに監督が「飛行機が殺したのではない。美女が野獣を殺したのだ」と半ば強引に自説を強調するシーンは、人間の傲岸さを示すとともに冒頭の主題とも連関しており、ストーリー構成が秀逸だと思った。