かきぴー

キング・コングのかきぴーのレビュー・感想・評価

キング・コング(1933年製作の映画)
4.2
どうしても「1933年なのに」という上方修正がついてしまうが、それでもバリ面白い!

キングコングが出るまではお世辞にも面白いと言えないが、キングコングが登場してからは怒涛の展開!「これでもか!」と言わんばかりに、シーンが切り替わるごとに単調増加的に面白くなっていく盛り上がり具合。当時の観客は、まさかジャングル→ニューヨークまで行くとは思わなかっただろうね。

◼︎ノンストップ&予想を上回る盛り上がり
この映画の何が素晴らしいって、ノンストップでキングコングを見せてくれること。そしてその規模感(すなわち面白さ)がドンドンとデカくなっていくことによる満足感。あの当時の映画ならば、最初のジャンクでのコングと恐竜の対決がクライマックスでも全く違和感ない。というか、そちらの方が自然かもしれない。しかし、この映画はその対決を何回も見せてくれる、しまいには、都会に行って飛行機と戦う!!おー、そんなに見せてくれるんすか!先輩!しかも、これは1933年の映画だ…

◼︎映画音楽史的にも重要な一作
先日『すばらしき映画音楽たち』を鑑賞していたら、本映画のことが言及されていた。どうやら、映画音楽にオーケストラを初めて持ってきた作品らしいのだ。今ならば映画音楽といえばオーケストラが王道だが、その原点はこの『キングコング』らしいのだ。音楽を担当したのは、あのマックス・スタイナー(後に、『風と共に去りぬ』とか『カサブランカ』の音楽を担当する人です)。

彼のオーケストラによる音楽によって、シュールに見えなくもないコマ撮りのキングコングをリアルに、そして「恐ろしいことが起きている」という感覚を、聴覚を刺激することによって与えたのだ。映画音楽がなければ、本作は、「すごいけど、正直、古いよね〜」と半笑いで語られる作品になっていたかもしれない…。逆に、実際は最高の評価を得ているわけなので、音楽の力は言うまでもないだろう。

◼︎一応、テーマ的にも高尚?
まぁ、娯楽としての怪獣映画を楽しむのが大きな要素の映画であることは間違い無いのだが、映画を面白くする工夫としての「メタファーの入れ込み」もされていてより楽しめた。とても有名な話なのでここで書くようなことではないかもしれないが、コングは黒人のメタファーである(らしい)。女を与えられて鼻息荒く興奮するコング。新大陸から文明社会に強制的に連行され見世物になるコング。そして最後には危険だと判断され殺されるコング。ストーリーの表面をなぞるだけでも、なんとも言えない気分になる(褒めてる)。個人的には、コングが見世物にされた時の演目のタイトル「世界八番目の不思議」が、この映画自体の最初にドーンと出るあたりも非常にシニカルでうまいと感じた。現実離れした設定でも、惹きつけられてしまうのは裏に敷かれているこのテーマが強く影響しているのは間違いない。

◼︎苦言を呈すとすれば…
もう、合格ラインなんぞとっくに越えてるが、あえて苦言を呈すとすれば、人間ドラマが退屈すぎる。原因として考えられるのが、登場人物たちの魅力のなさ。正直に申しあげると、キングコングが出るまでの序盤は面白くない。「キングコングはいつ出るんだろう?」という興味のみで、観客の心をギリギリ離さずにいれている。それでいて、わりと時間を取るのだ。ほとんど、フィクションとリアリティを繋ぐような作業が続くのだが(バックグラウンド説明)、こっちとしてはそこは気にしてないから…と言いたい。登場人物を掘り下げる時間は十分にあったのに、イマイチ惹きつけられなかった点は、私としてはマイナスだ。まぁ、序盤のマイナスなんて、最初のバトルだけでチャラになるんだけどね!

◼︎おわりに
とりあえず、何回でも観たい!と思える傑作だった。今まで観ていなかった自分が情けない…。
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