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ノー・マンズ・ランドのバナバナのレビュー・感想・評価

ノー・マンズ・ランド(2001年製作の映画)
3.5
ボスニア紛争でセルビア軍とクロアチア軍が向き合っている中間地帯(ノーマンズランド)に取り残された、双方の兵士たちを軸に話は進む。

この、取り残された兵士たちのやり取りが長いので、このまま平板に進んで行くのかと思ったら、後半やっと国連軍やマスコミが出てきたら急展開し、ああ、これが撮りたかったのかと、やっと趣旨が分かった。

今作はボスニア紛争が舞台になっているが、そもそもユーゴスラビアの独立運動って、クロアチア紛争やボスニア紛争、果てはコソボ紛争まであって、この頃は私は既に大人だったにも関らず、いったい何がどうなっているのか全然分からなかったのだが、まとめているサイトを見てみると、
元々ユーゴスラビアとは6つの共和国から出来ていたが、
1980年にそれらをまとめていたチトー大統領が亡くなると求心力を失い、
それぞれの民族がユーゴスラビアから独立したいと、まずクロアチア紛争から始まったらしい。

そして、本作の舞台となった当時のボスニア共和国内では、クロアチア人(17%)とムスリムのボシュニャク人(44%)がユーゴスラビアからの独立を目指し、
残りのセルビア人(33%)はユーゴスラビア残留か、ボスニア共和国からセルビア人だけの独立を目指していた、という複雑ぶり。
元々ユーゴスラビア時代は政治経済がセルビア人に握られていたので、昔から特にクロアチア人とセルビア人の仲が悪かったそうなのです。

そして、この紛争を見守るだけの国連軍。
国連軍はどちらの味方にも付かず、ただ食糧や物資を被災した人達に供給する為に現場に居た、という事実。
映画の中では国連軍やマスコミって、結局ただの賑やかしかい!みたいな扱いだったけど、でも長い歴史があって双方がいがみ合っているのだから、下手に介入してしまったら、それこそこの紛争はもっと長引いただろうと思うのです。
ただ、片方の味方にはならないけど、手助けをする為に来たのだったら、徹底的に人命救助はすればいいのに…とは思ったのだけれど。

幾ら相手の民族が憎いからって、人間ってあんな事まで出来てしまうんですね。
イラクでも生きた人間に爆弾を巻き付ける人間爆弾が日常茶飯事に起きていたから、一旦戦争になると、こういう残酷な事が簡単に起きてしまうのだろう。

イギリスの女性マスコミも、せっかく現場ギリギリまで来ているのに、生中継でベストショットが撮れたらそれでOK。
あのウザいくらいの熱心さも、結局表面的なもの。
真相を自分の目で確認しようとはしない。

民族でいえば、同じ南スラブ系民族だからユーゴスラビア連邦を作っていた筈なのに、民族間同士の争いって空しい。
日本と韓国の関係なんかも、遠くの国の人から見たら、同じ顔してるのに何揉めてるの?
くらいにしか思われてないんだろうな。
憎しみが憎しみを呼んでしまう。それを止めるのって難しい。
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