こたつむり

ロケッティアのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロケッティア(1991年製作の映画)
3.4
♪ SPEED FREAKS BABY ROCKET DIVE
  君のイビツなロケット
  高速の旅は一瞬のスパーク

どんな価値観も不変じゃないのが真理。
…なんてちょっと大仰な表現ですけども、そんなことを感じた作品でした。

と言うのも主人公の造形が鼻につくんです。
彼女のために危機に飛び込む…と書くと体裁は良いのですが、無鉄砲を超えた“思慮の浅さ”を感じたんですね。無骨と言うよりも無遠慮で無神経なんです。

でも、当時はこれでも良かったのでしょう。
というか“何も考えずに愛する人を救う”のが主人公としての必須条件だった気もします。その結果、事態が混迷しても、誰かを傷つけても…「仕方ない」の一言で済まされたのです。

しかし、現代はまさに“配慮”の時代。
右も左も上も下も周囲を見渡して“誰も傷つけないことを確認”してから危機に飛び込むことが望まれるのです。面倒くさい時代になりましたね。

ただ、ぶっちゃけた話をすると。
どちらも“思慮が浅い”んですよ。「何がその状況において大切なのか」が分かっていれば、状況に応じて判断すれば良い話ですからね。遍く全てを救済するなんて無理な話です。

そこで大切なのは“覚悟”。
どんな物事にも“優先順位”があり、それを決めるのは自分次第。良識とか一般常識とか、そんなモヤッとしたものに縛られず、自分の頭で考えないといけないのです。

そう考えると。
本作の主人公からは“覚悟”を感じませんでした。先にも書きましたように、脊髄反射的な行動は“覚悟”とは正反対にあるものです。

まあ、そんなわけで。
ジム・キャリーのようなビリー・キャンベルが演じた主人公の微妙さ加減だけがモッタイナイ物語。第二次世界大戦前夜を時代背景としたレトロな世界観は面白かったですからね。主人公の描写を変えれば現代でも通用すると思います。

ちなみに魅力的だったのは敵役。
ティモシー・ダルトンの色気が完全に主人公を喰らっていました。表現は悪いですが“にやけ顔”が素敵なんです。
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