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スワロウテイルのSIのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
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2018.12.27
自宅TVにて鑑賞

YEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」

これほど様々な切り口で語れる映画もそう多くは無い。
岩井俊二。
知れば知るほど天才だと感じる。今日も中国人留学生と話していて岩井俊二の話になったが、彼女は最初彼を小説家だと認識していたのだから凄い。日本では絶版となっている本が中国では今でも売られている。
設定や背景描写、テーマが素晴らしいので小説としても成立するのだろう。

今作は、円都(yentown)と呼ばれるほど円の価値が強くなっている日本のifを舞台に、円盗(yentowns)と呼ばれる出稼ぎ労働者にスポットを当てた映画である。
二十年前に撮影された映画であるものの、中国語と英語が飛び交いアジア的に文化が入り乱れる様はまさに昨今の東京にピタリと符合する。円の価値は緩やかに死んでいるものの、外国人が出稼ぎに来ている状況には変わりがない。そして彼ら、特に中国人を金欲にまみれて品が無いと見下しながら、結局は金を崇めている日本人の陰湿な精神性もこの映画に表現されている通りだ。

関わっている人々も素晴らしい人達が多い。
プロダクションデザイナーとしては若き頃の種田陽平が参加しており、岩井俊二の背景感覚と相俟って素晴らしい世界観を創り出し名を上げた。クエンティン・タランティーノ、チャン・イーモウ。その後手掛けた作品はご存知の通りだ。
https://www.cinra.net/interview/2013/10/17/000000?page=3

歌姫の役として主演を務めたCHARAは今作の楽曲で自身初のオリコン1位を獲得し時代のアイコンとなる。小林武史とのコンビは後の『リリイ・シュシュのすべて』の布石となりsalyuのデビューに繋がっていく。
三上博史、江口洋介、渡部篤郎というトレンディ要素の強い三人も英語や中国語を喋らせると更にかっこいい。岩井種田の演出する世界観にマッチしている。
特に三上博史は全く知らなかったが窪塚洋介に似て演技に狂気を感じた。
伊藤歩も16歳ながらヌードを披露しているし、全ての関係者の本気が詰まった良い映画だと思う。

話の転がし方だけが観ていてもやもやする。観客がついていけない上にエンターテインメント性が足りない。岩井俊二は脚本家つけてくれないかなあ。
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