こたつむり

ランド・オブ・ザ・デッドのこたつむりのレビュー・感想・評価

ランド・オブ・ザ・デッド(2005年製作の映画)
4.0
闇に閉ざされた世界。
胸の奥にある篝火だけが足元を照らしてくれる―。新しい局面を描いた『リビングデッド』シリーズ第四作目。

旧三部作はゾンビが目覚める物語でした。
それは人間の側から見たら絶望の物語。
一説に「ロメロ監督の作品は社会情勢を反映させている」と聞きますが、まさしく旧三部作は人間の醜さや愚かさに着目し、それを見事なまでに描いた傑作群でした。

そして、本作は前作から20年を経て作られた作品。正直なところ、その20年間で社会が良い方向に向かったか…と問われると返答に困りますよね。冷戦は終わっても新しい形で戦争は続いていますし、石油は枯渇していなくてもエネルギー問題は解決していません。

その状況だけで考えてみれば。
本作も暗い物語になる…はずなのですが、現実社会を模した世界(囲われた壁の中で繁栄を享受する支配者層と、眼の前の快楽に溺れる被支配者層)に対抗するために、主人公の《ライリー》には“古き善き人間性”が備わり、希望を失わない物語に仕上がっているのです。

だから、ゾンビ映画なのに熱いのです。
旧三部作ならばパニックに陥る状況でも、冷静沈着に状況を判断し「それでも…」と手を伸ばすのです。ゾンビ映画には合わないキャラクタかもしれませんが、周りが酷すぎるから《ライリー》が格好良く見えるのですね。

また、彼とは違う価値観の持ち主《チョロ》も絶望に閉ざされた世界の中で“前向き”なのです。正直なところ、こういうキャラクタは大好きですよ。単純に痺れるし憧れますね。

それに彼らを中心とした“純粋な仲間意識”が描かれているのも嬉しい限り。ダリオ・アルジェントの娘、アーシア・アルジェントのセクシーな姿も…うひひ。

ただ、あくまでもジャンルとしてはゾンビ映画。グチャグチャでビチャビチャな場面は相変わらずですからね。まあ、それがないゾンビ映画なんて「空を飛ばない豚」と同じなのかもしれませんが…うう…相変わらずグログロな場面は苦手です…。

まあ、そんなわけで。
世間での評判は芳しくないようですが、一般的なホラー映画とは一線を画す作品なので、ゾンビ映画に抵抗がある人にもおススメしやすい作品です。多少のグログロに目を瞑れば…ですけども。

To be continued… →→→ 『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
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