亘

トリコロール/白の愛の亘のレビュー・感想・評価

トリコロール/白の愛(1994年製作の映画)
3.8
【トリコロール三部作 第二作】
舞台はパリからポーランドへ。美容師カロルはEDというだけで妻ドミニクから離婚を申しだされる。彼は何度も復縁を迫るが結局セックスできないので妻から呆れられてしまう。彼は祖国ポーランドへ帰るがドミニクを諦めきれず彼女の愛を確かめるため周到な計画を立てる。

フランス国旗の白が"平等"を表していることから、この作品は"愛の平等"がテーマになっている。ポーランドの寒そうな雪景色が寂しげで素朴な雰囲気の作品。三部作の中で唯一男性が主人公になっている。

カロルはドミニクから受けたひどい仕打ちに対して復讐することでバランスをとって平等にしようとしている。初めはドミニクが力を持っているけど次第にカロルの計画がスタートすると今度はカロルが力を持って、というシーソーのような展開。確かにEDというだけで捨てられ、自分は妻を愛しているのに他方妻はほかの男と楽しんでいるというのはカロルから見ると不平等。それでもドミニク奪還計画が成功すると一気にカロルが大逆転して優位に立つ。基本的に素朴な雪景色のシーンが多いけどカロルが逆転した夜は白があまりない。それもカロルの気持ちを表しているように感じた。

一気に大逆転したはいいけどその後はカロルの作戦の周到さが裏目に出たように思う。彼の計画は"平等"を目指すあまりに復讐になってしまっていた。それまでやられた分を取り返そうと周りが見えなくなってしまっていたからなんだろうけど、計画がうまく行き過ぎたあまり取り返しのつかないことになってしまう。"平等"を手に入れたものの後にも引けなくなった、そんな2人の静かなラストが切なかった。

印象に残ったシーン:カロルが櫛笛を吹くシーン。カロルがドミニクの前に突然現れるシーン。カロルが涙を流すラストシーン。

前作と重なるポイント
法廷で扉が少し開くシーン:第一作のジュリーがサンドリーヌを探しにきたシーンだった。
ペットボトル回収ボックスの老婆:第一作にも登場。カロルは老婆を鼻で笑った。
カロルが家を追い出されるシーン:第一作のジュリーはアパートで締め出されていた。
亘