Rily

霧の中の風景のRilyのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.0
ようやく観れました…。かなり回って見つけた本作。一回だけだと、どうしても腑に落ちなかったため、睡魔と戦いながらも二回鑑賞(正確には2.5回ほど)。…到底、全てを理解出来た自信はないが、とんでもない世界観…。

ストーリーは二人の姉弟が家出をし、父を探すというもの。冒頭、駅のホームで立ち尽くす二人の後ろ姿。バレずに無賃で乗った列車で、果てしなく“あてのない旅”が始まる…。

話の軸自体は既にあるのだが、それ以外の部分は観客が自由に“配色”していくような印象を受けた。そして、解釈もおのおのに委ねている印象。
…計算尽くされた配置、長回し、音楽。そして、二人の“イマ”を“全て”、メタファー的・詩的・普遍的要素で描き…散りばめ…織り交ぜることで、画面越しの私たちをノスタルジックな雰囲気に包み込む。

赤の愛情…黄色の希望…緑の安息…青の信頼…灰色の空想…黒の神秘…白の無限

赤の危険…黄色の不安…緑の未熟…青の冷酷…灰色の無機質…黒の重力…白の空虚

私には1度目と2度目では反転したようなストーリーになり、胸をえぐられたような思い。まるで「銀河鉄道の夜」を観ているような幻想的な世界観。
これは現実なのか…夢なのか…。夢だと気付く現実なのか…現実だと気付く夢なのか…。はたまた…。
私が感じ取れただけでも、6つの見方と解釈が出来る…。先述した通り、話の軸に配色するのは観客である。

…次の停車駅はどこなんだ?
…この列車はどこまで続くんだ?
…私たちの降車駅はどこなんだ?

パケ表紙の写真はラストシーンの前の列車の中。この二人の表情の“違い”をみて、なにを想うか。この後ふたりが手をつないで向かう先、霧の中で見た風景とは…。

ただし、あくまでもこの“おはなし”は、二人の姉弟が自分達の“目で見て”“感じて”“迷い”“決断する”…いわば成長物語であり、おとぎ話なのである。

傑作
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