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レインメーカーのsiaのレビュー・感想・評価

レインメーカー(1997年製作の映画)
3.8
前々から見てみたいなと思っていたマット・デイモン主演の法廷ドラマ。
『グッド・ウィル・ハンティング』と同じ年の作品なんですね。

驚くような意外な展開があるわけではないし、『エリン・ブロコビッチ』みたいに実話というわけでもないけど、見終わった後の満足度は高かったです。
実力ある監督やキャストによって丁寧に作られた佳作という感じ。

キャラクターがみんな個性的で面白く、特にマット・デイモンは正義感に燃える新米弁護士のキャラクターがハマっていました。
法廷での勝手が分からずおろおろしたり、弁護士業界の暗い部分に思い悩んだり、でも決めるところはバッチリ決めてくれる、愛着の持てる主人公です。

この映画では主人公の担当する複数の案件が並行して描かれるのですが、物語が進むにつれて、それぞれの事件に関わる人物同士が徐々に交差していく過程も面白いです。

ただ、DV夫の家に乗り込むパートだけは映画の中で少し浮いている気がしました。
主人公が弁護士としての無力さを実感する姿を描きたかったのかなとは思うのですが、急に事件が起こってあっさり収拾がついてしまうのでやや唐突さを感じました。


この映画は法廷ドラマではありますが、主題としては弁護士の在り方そのものを描いた作品です。
主人公は法と人々を守る仕事に憧れて弁護士を志しますが、だんだんと綺麗事ではやっていけない世界を知って苦悩するようになります。

弁護士の数が多く競争が激しいアメリカでは、仕事にありつくのも一苦労です。
「交通事故が起こると医者より先に弁護士が駆けつける」なんてジョークを聞いたことがありますが、実際この映画でも主人公は病院に張り付いて契約を結べそうな被害者を探す仕事を強いられます。
また、主人公と対決する大手保険会社の顧問弁護士は企業の利益を守るために裏工作を駆使して優位に立とうとします。

生き延びるためにだんだんと人間性を失い手段を選ばなくなってしまう弁護士業界をこの映画は痛烈に批判しています。
ラストの主人公の決断には考えさせられるものがありました。

そういう汚い部分を描く一方で、救われた被害者や人々の温かみという側面もしっかり描かれており、最後は割とスッキリした気持ちで見終えることができました。
ストーリーも結構シンプルなので、多くの人にオススメできる作品なんじゃないかなと思います。

ちなみに、本作でヒロインの女性を演じているのは『HOMELAND』のクレア・デインズなのでドラマファンの方も是非。
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