カトゥ

ハンバーガー・ヒルのカトゥのレビュー・感想・評価

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
4.0
言葉が認識を作り、認識がまた言葉を作る。鶏が先か卵が先か、という話になると、僕達は言葉で考え、社会全体で言葉を作ることから、日常においては言葉が認識を作る、と言っていい。

実際、言葉が丁寧な人は、ものをしっかり考える傾向にある、と思う。これはもちろん言葉遣いの話ではなくて、適切な語彙を選ばない人や集団は、どうしても世界が狭くなり、ものの捉え方が雑になる、という事。言葉というのは、「通じればいい」だけのものではない。

軍隊においては、あえてその“効能”を利用する。
公私とも、使う言葉を限定することで、戦争向けの人間に仕立て上げる。一兵卒に広い視野や発想は必要無い。略語とスラング、仲間だけに通じる符丁こそ、戦士らしさに繋がる。
本作では、序盤で叩き込まれ、たどたどしく使うそれらの「兵隊言葉」が、実際の戦場ではあっという間に「サマになる」。ずいぶん荒っぽいけれど、そうやって若者が兵士になっていく。
その先が「ハンバーガーヒル」、つまりミンチというのはやるせない。でももう彼らには選択肢が無い。マインドセットされたのだから。

飛び交う土塊、血煙、気が滅入るような怒号、そんな描写よりも、兵士達の言葉の変化が気になる作品だった。短く発せられる戦場の言葉。なるほどこうやって人は変わっていくのか、と印象に残っている。
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