きょんちゃみ

マグダレンの祈りのきょんちゃみのレビュー・感想・評価

マグダレンの祈り(2002年製作の映画)
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マグダレン修道院の「マグダレン」とはマグダラのマリアのことで、マグダラのマリアはかつて娼婦だったがイエス・キリストに救われたことになっている。

マグダレン修道院というのは、表向きは、洗濯場として運営されていた修道院(矯正院)で、未婚の母や娼婦を「矯正」するという名目で建てられており、性的虐待もあったらしい。

1950年代にマクダレン修道院で助産師として働いていたジューン・ゴールディングという女性の暴露で実態が暴かれ、ピーター・マラン監督により2002年に映画化されたのがこの映画『マグダレンの祈り』である。

このマクダレン修道院のうちのひとつが、ショーン・ロス女子修道院で、ここに入れられたフィロミナ・リーという女性が、そこでアンソニーという子どもを産む。フィロミナは1951年18歳のときにカーニバルで出会った青年と性関係を持ち妊娠。フィロミナの父親は敬虔なカトリックだったためにこの未婚妊娠を恥じてフィロミナをマグダレン修道院のひとつであったショーン・ロス修道院に入れたのである。

ちなみに「聖フィロミナ」とはカトリック信仰においてはキリスト教を弾圧していたローマ皇帝ディオクレティアヌスの求婚を拒否して殺されたとされる女性の名前であり、聖アグネスなどともに処女信仰のシンボルとなった女性の名前であることも注意が必要である。

フィロミナの子供の名前はアンソニーである。アンソニーは、勝手にアメリカへと養子に出され、しかもその記録を抹消された(のちにアメリカで改名してマイケル・ヘスとして育った)。このアンソニーを71歳になったフィロミナがジャーナリストの力を借りて探し出そうとする映画が『あなたを抱きしめる日まで』(2013)である。

この、悪名高いマグダレン修道院が200年の歴史を終えて閉鎖されたのは1996年のことである。

マイケル・ヘス(アンソニー)は、アメリカでレーガン大統領の法律顧問まで務める弁護士になっており、しかもゲイであり、そしてエイズにより、1995年に既に亡くなっていたのである。1988年のエイズの年間死者数は16000人を超えていたという時代の話である。ちなみに、レーガン大統領のエイズ対策はまったく不十分であった。

実は、マイケルも生前ショーン・ロス修道院を訪れており、フィロミナも同所を訪れていたわけだが、修道院は意図的にこの2人を引き合わせることをしなかったのである。

この映画の中で、フィロミナは、「怒りの中で生きたくないから」と言って修道院の仕打ちを許すという。
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