磔刑

大阪物語の磔刑のレビュー・感想・評価

大阪物語(1999年製作の映画)
3.8
おススメ度☆☆
大阪に住んだ事がある人なら、作品のなんともない描写にも面白さを見出せるが、大阪の事を全く知らない人が見たら只々誤解するだけのような気がする。大阪版『シティ・オブ・ゴッド』。

<以下ネタバレあり>

「やっぱすっきゃねん」
ストーリーっちゅうストーリーはないさかい、ものごっつい間延びしとる。でも、古きよき(そこまで古くもないんやけど)大阪の風景がおもろくて楽しめる。ちゅーかそこが見所まである。なものんで、大阪の人間以外からしたらそこまで楽しめんかもな。
なんやったら大阪ってこんなヤベー町なんか!?って誤解されそうな描写モリモリで、これは逆に大阪に対するネガキャンやん!?とか思うんやけど、すまん。だいたい大阪ってこんな所やねん。にしても大阪弁活字にすると大体平仮名になるから、ものごっつい読みにくーてかなわんな。

要するに大阪の原風景を楽しめる作品。大阪人からしても一切違和感ない(誇張はあるが。え?誇張してない?んなアホな)。
関西圏以外の人間が抱く大阪のイメージってコナンに出てくる関西人みたいないわゆるエセ関西人なんやけど、これこそ!!ネイティブ関西人!!って感じで、他府県民にこれが大阪の日常、人々ですって紹介する教材としては文句のつけようがないね。ただ、ここまでコテコテの大阪民ってよっぽどアングラな所行かないと会えないと思うんよ。
大阪民からしても、ここ大阪か??って思う程ヤバそうな場所あって軽くひく😅。ごく稀に西成をチャリンコで突き抜ける事あるけど、この映画程の活気(?)はないもんなー。ただ、安全を考慮して絶対自転車降りへんけどな!!自転車のスピードで見る分にはおもろい場所やけど、徒歩で散策するのにはリスクあるからな🤣🤣🤣

あと、池脇千鶴の透明感がヤバイ。ザ・美少女って感じで終始物語を華々しくしてる。美少女って言っても絶世の美人とか、突出した美しさがあるって訳じゃなくて、子供から大人になるまでのほんの一瞬、少女という奇跡の瞬間の美しさを上手く切り取ってる。
表面は愉快な浪速少女だが、内面は他の思春期女子と変わらないナイーブさ。その高度な二律背反が生み出す属性は『おジャ魔女どれみ』のあいちゃん感ある。大阪の女の子を記号化したら大体こんな感じになるのか?全然嫌いじゃないけど、『おジャ魔女どれみ』をリアタイで見ていてあいちゃん回だった時の憂鬱感が思い出されて少しセンチになったね。子供ながら「日曜の朝8時半から、なんちゅー暗い話何放送してんだ!?」って白目剥きながら思ったもんだ。

それとジュリーが中々良い演技してる。自分、成人するまでジュリーのことってブッサイクなオッさん程度にしか思ってなかったんやけど、昔はカリスマ的なアイドルって知って驚いたもんだ。今作でもその面影を感じさせないぐらいい醜く劣化してますやん?
でも時折見せる儚げな表情や流し目から昔からモテる男ってのが直感的に伝わってくる。これは勿論演技力単体の力もあるけど、それ以上にジュリーがトップアイドルだったバックボーンが滲み出た結果だと思うし、これだけでジュリーを起用した意味がある。この役者の経験が役柄に大きく生きてるのって『運び屋』の時のクリント・イーストウッドと同じだと思う。

父親が送った暑中見舞いのハガキ見つけたのも消印から居場所突き止める展開へのキッカケかと思ったら違うっていうね。あんだけ躍起になって探してたのにそこに気づかないのは逆に違和感あるんだが、まぁ子供だし仕方ないかってところか?
吉本芸人のカメオ出演も作品の説得力を大きくしてる。大御所や現在第一線で活躍してる芸人の若かりし頃の貴重(?)な映像もイースターエッグ的な楽しさを生み出してる。

大阪人以外お断り感強いけど、手軽に大阪の町(アンダーグラウンド)を観光したいならオススメ。まぁ、手始めに『ブラック・レイン』見て慣れてからの方がええかもね。
磔刑

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