みっちゃん

陽暉楼のみっちゃんのレビュー・感想・評価

陽暉楼(1983年製作の映画)
3.5
松田優作が出ていたのは「陽炎座」。
漢字三文字のうち一字が同じだから、勘違いしていた。
なんてことはどうでもよくて、観始めたら最後までノンストップで観てしまった。

女性を美しく撮るという五社監督。
そうでなくても美しい盛りの女優たちの競演だった。
37年前の映画、さらに遡って大正から昭和初めにかけての話で、こういう風情の映画はもう作られないね。

追っ手に妻を殺され、妻との間にできた赤ん坊を連れ、高知へ逃げた勝造(緒形拳)の生業は女衒。
その時の赤ん坊がふさ子で、20年後、父娘とも世話になったらしい陽暉楼で、売れっ子芸者桃若(池上季実子)になっている。
芸者は体を売らない、というのは建て前で、嫌でも客と床を共にしなければならなかったようだ。
売れっ子であればあるほど、店のために有力者やお大尽と付き合わなければならない。
だいたいがジジイ。役とは言え、ジジイたちみんなヤラシイです。
それが当たり前に許されていた時代だものね、悲しいわ。

大阪で勝造に囲われている女・たま子(浅野温子)は、今の生活に飽き足らず、陽暉楼の芸者にと自分を売り込むが、おかみ(倍賞美津子)に拒まれ、遊廓で働くことを自ら選ぶ。
どんなにはすっぱな口をきいて強気に構えていても、初めて身を売る段になると逃げ出す女ごころが痛々しい。
たま子を連れ帰り、何かにつけて助けるのが、勝造の子分筋の風間杜夫。

たま子は、なにかと陽暉楼・桃若に対抗しようとする。
ダンスホールでの、着物を端折って惜しげもなく足を蹴り上げ踊る姿がはじけていて素晴らしい。
その後の桃若とのつかみ合いのケンカが凄まじい。
タイマン張るというヤツかな。
浅野温子のキャラクターは、土屋アンナと重なるなあ。

一方で、大阪のヤクザが陽暉楼を乗っ取り、高知に進出することを画策し、動いている。
勝造が一人で立ち向かったときのカッコいいセリフ。
『土佐に志士は出たち、極道は育たんと言われちゅうが、その訳はのう、土佐の人間は男じゃち女じゃち一皮むいたら全部が極道はだしの命知らずっちゅうこっちゃ。ほうじゃきに高知が欲しいちゅうて、わし一人を消したち、どうにもならんぜよ』
ぜよぜよ!!!出たっ!このセリフを聞けただけで満足です。
別に坂本龍馬をぜんぜん好きじゃないけれど、良いよね、『ぜよ』。
酒飲み県1位2位を争っているけれど、秋田弁じゃこうはいかないな。

大阪から陽暉楼を乗っ取るために送り込まれた女の役が佳那晃子で、まあ美しくて、エロいです。
とにかく女性たちが美しい、艶っぽい。今こんな女たちいない。
難を言えば、芸者の踊りとか歌のシーンが長い、ちょっとダレる。
そして、桃若がなぜあの若様に惚れたのかが今一つ納得いかない。

北村和夫、成田三樹夫(出てる!)、小池朝雄、丹波哲郎、そうそうたる俳優陣。小林稔侍も若い!
園佳也子さん出ていて、ちょっと和む。
仙道敦子が修行中の芸者役で、まだ子供という感じ、ドラマに出る前だよね。
昔の映画はそういう楽しみ方ができるね。

まじめな感想も。
貧しい家の女の子を買い取る女衒の仕事が描かれている。
子どもを売らなければ生きられなかった家があった。
映画の中で、満州に行こうかという話が出る。戦争が近づいている。
その時代に自分が生きていたら、どうなっていただろうと考える。
男だったら、女だったら?
戦後の豊かな時代に生まれて、幸せだったと噛みしめる。
今、世の中は少し怖いけれど。