Jeffrey

IP5/愛を探す旅人たちのJeffreyのレビュー・感想・評価

IP5/愛を探す旅人たち(1992年製作の映画)
3.5
本作はジャン=ジャック・ベネックスが1992年に監督した作品でこの度ビデオを購入して初鑑賞したけどよかった。監督は既になくなってしまっており最近、ディーバがものすごく好きで、この作品も前から気になっていたもので、フランスが産んだ名優であるYves Montandの熱演が素晴らしかった。音楽はベティブルーのガブリエルの美しくも切ないオリジナルスコアが耳に残る。世代の違う3人の求める愛を大自然の中で歌いあげたロードムービーの中でも非常に良かったし、超現実的な感覚と鮮烈な映像美で迎えた本作はブルーレイの高画質で見てみたいものだ。確かこの作品のクランクアップ直前の91年の11月9日に心臓発作でYves Montandはこの世を去ってしまって、これが遺作になっているはず。彼の晩年の輝かしい記念碑となって人々の心に刻まれている事は言うまでもない。

それにしてもタイトルがすごく意味深である。監督の5作目だから5と言う数字がタイトルにあるのかよくわからないが、オープニングで壁に絵を描くときのサインも同じタイトルだったし、社会から疎外され行き場のない現代の若者たちの自己表現とでも言うのだろうか。この不思議なタイトルが謎に包まれている。この作品の脚本は監督の前作のロザリンとライオンの人物で、ベネックスファミリーが集結している映画だなと改めて思う。かつての作品たちと本作が異なるのはそれぞれの緊張感がないと言うことだと思う。配達員とオペラ歌手の間の緊張だったり労働者と美貌の娘との間の緊張だったりライオンと調教師の緊張だったりそういったスリリングな場面がこの作品にはあまり感じられず、世代が違う3人のバランスが軸になっている。

余談だが確か監督は日本で舞台に挑んだYves Montandの姿を見て、また超満員の日本の観客を熱狂させるのを見て監督が感動して彼をこの映画に起用したらしい。だから東京に来ていたYves Montandとその舞台を見ていた監督は日本を舞台にこの作品の主人公を決めたと言うのは日本人としては少しばかり嬉しい気もする。確か第3回東京国際映画祭の審査委員長として89年にはYves Montandも来日していたし、その後にすぐなくなってマスメディアが監督を批判していたのが忘れがたい。Yves Montandを早死にさせたと…。
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