滝和也

駅馬車の滝和也のレビュー・感想・評価

駅馬車(1939年製作の映画)
4.1
広がる荒野、
疾走する駅馬車…。
アパッチが狙う
その駅馬車に乗る
9人の人間模様…。

不朽の名作、巨匠ジョン・フォードの織りなす傑作、西部劇。

「駅馬車」

30年前に見たその作品は色褪せることなく、荒野を吹く一迅の風の如く、厳しくも爽やかな後味を残します。

西部のフロンティア、トントの街からローズバーグに向う駅馬車は出立しようとしていた。アパッチの襲撃が予測される駅馬車には8人が乗り合わせた。そして脱獄囚であるリンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)が途中乗り込む。彼らには先に向うしかない理由があったのだ…。

荒野に聳える巨大な岩山、モニュメントバレーを見据え、疾走する駅馬車内での丁寧なキャラクター描写、人間模様が描かれるドラマ性が迫り来るアパッチとのアクション、リンゴが対決するラストに向けての展開を盛り上げていきます。

それぞれに目的やそうせざる得ない個性豊かな乗客たちが登場し、彼らの人間模様を描き出します。無頼漢であり、無骨な西部の男の代表であるリンゴを演じたジョン・ウェインをアメリカの男代表に押し上げたのが今作。復讐を目的にした中でも、無骨な優しさを見せる彼。そして娼婦であり、街を追い出されたダラス(クレア・トレヴァー)とのロマンスがいい。その彼女と対比される存在の貴婦人。ある理由で貴婦人を守ろうとする紳士な博徒。リンゴを知りながら、逮捕する保安官、酒浸りの陽気な医師。酒の販売員と子沢山な御者、口うるさい銀行員とコメディリリーフにも事欠かない個性的な面々。誰一人同じものなく、起る出来事により不思議なバランスを保ちながら馬車は行きます。


そして、終盤。いよいよアパッチ登場。ここまで姿なき恐怖で描かれた彼らが登場してからは怒涛の活劇を展開。疾走する馬車と馬上のアパッチの銃撃戦が展開。馬はつんのめり、人はぶっ飛び、生身の凄まじいアクション。そして迫力を増すカット割、カメラワークが凄まじく、素晴らしいの一語に尽きます。後に黒澤に影響を与え、近年でもマッドマックスに影響を与えたと言われる至高のシーン。

そしてラストの復讐劇から、爽やかなラスト。エンターテイメントの、西部劇のからっとした楽しさをすべて見せてくれる傑作ですね。

30年前、今作を見て西部劇に、ジョン・フォードにハマり何作か連続で見た覚えがあります。その男臭さや無骨な男たち、優しい女性たちの物語は爽やかであり、気持ちの良さを感じますね。再鑑賞またしていきたいと思います。
滝和也

滝和也