ほーりー

駅馬車のほーりーのレビュー・感想・評価

駅馬車(1939年製作の映画)
4.7
説明言うに及ばず、巨匠ジョン・フォードによる西部劇の金字塔である。

当時ユナイト映画の宣伝マンだった淀川先生が孤軍奮闘して見事大ヒットに導いたことでも知られる(本当に一人だったので見かねた東和の野口久光さんが自社にダマで手伝ったという逸話も聞いたことがある)。

荒野を疾走する駅馬車とその中に乗り合わせた人々の人間模様。

殺された父や兄弟の復讐心に燃える中、ひとりの女性と出会い、次第に愛する者のために生きることを決意する脱獄囚(ジョン・ウェイン)。

その脱獄囚と恋に落ち、自分の心の中に秘めていた優しさに気づいていく娼婦(クレア・トレヴァー)。

その娼婦を最初毛嫌いながらも、彼女の献身的な看病に次第に心を開いていく身重の軍人の妻(ルイーズ・プラット)。

その妻にほのかな恋心をいだく札付きの賭博師(ジョン・キャラダイン)、かつては名医だったが酒に溺れてしまった医師(トーマス・ミッチェル)、かつて脱獄囚の父とは親友で今は彼を捕まえる立場の保安官(ジョージ・バンクロフト)。

そして、その脇をお喋り好きのウザキャラ馬車業者、銀行の金を横領した頭取、みんな自分の名前をなかなか覚えてくれない小心者の酒商人が支える。

クライマックスの先住民の襲撃シーンは今見ても圧巻だが、やはり本作の肝は馬車に乗り合わせた個性豊かな人々が織り成すドラマであり、それを詩情豊かに描く映像美だと思う。
特に旅先で夫人が出産するシーンで、赤ん坊を取りあげるクレア・トレヴァーの姿はまさに聖母そのもの。

よく先住民の扱い方で槍玉にあがる本作、確かにそういうことを気にする方にとっては致し方ないことだが、それだけで評価するにはもったいないぐらいの魅力がこの映画には詰まっている。
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