shibamike

駅馬車のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

駅馬車(1939年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

----- 2回目鑑賞(2022/09) -----

初めて鑑賞したときはアパッチ襲撃シーンに心の底からシビレたけど、2回目鑑賞では、やっぱり展開がわかっているからか、そこまでの衝撃は受けなかった。にしても、このシーンの迫力は特筆すべきでせう。普通に頭オカシイ。


今回、改めて見直して思ったのは、主人公達にとっての敵というのはアパッチや三兄弟ではなく、内なる自分自身だったのではないか、ということであった。
他人を職業や評判で差別して、という寂しい心。
しかし、赤ん坊の出産(ジョン・フォード、出産好き過ぎやろ)や道中の苦労を共にするうちにみんなは団結するやうになり、その集大成がアパッチ襲撃シーンだったのでは。

なので、アパッチや三兄弟は主人公達にとっての敵ではなく、障害だったやうに思う。


駅三毛 荒野の一句
「だだ広い 荒野を全裸で 走りたい」
(季語:荒野→高野連→甲子園→夏)






----- 1回目鑑賞(2018/01) -----

「カッコいいもの」に自分はとにかく弱い。
本作における、アパッチとの対決シーンは強烈なインパクトを持って、自分の中のカッコいいと思うものリストに堂々と追加された。カッコ良すぎて観ていて震えた。

「駅」と言うと電車を思い浮かべる自分ですが、昔は馬車の停留所だったのですね。「駅」という漢字が馬偏なのはそういうことなのでしょう、きっと。

駅の間を走る馬車で駅馬車。この駅馬車に様々な階級、様々な用事を持った人々が乗り合わせ、物語は進んで行く。7人乗ればギュウギュウ詰めの車内。身重の貴婦人、娼婦、脱獄囚、アル中の医者、博打打ち、銀行家、セールスマン、保安官、御者とどいつもこいつも訳ありの連中。
道中、様々な出来事が彼らに起こる。
その中で、他者への思いやり、差別、偏見、軽蔑、傍若無人な振る舞い、献身的な態度、反省などを垣間見ることができ、人間社会の縮図を駅馬車の中に見出だした。

たまたま乗り合わせたこの一同にアパッチ、ジェロニモが襲いかかる!(なんてイカす名前なんだ、ジェロニモ!)
だだっ広い真っ白な荒野(白黒映画だから)を真っ黒な馬が地響きを立てて駆け抜ける!背後ではアパッチが今にも襲いかかろうとしている。
「七人の侍」はこの映画の影響をメチャクチャ受けていると思った。黒澤明はこの映画を観たとき、憧れ嫉妬したのだろうなぁと勝手に妄想。

猛スピードで駆け抜ける馬達が次から次へと転び、落馬落馬落馬!馬に引きずられる者や、ついには落馬して馬車の下敷きになりそうな者まで。体を張ったシーンの連続にドキドキが止まらない。迫力がとにかく凄い。

必死でアパッチに応戦する一同だが、無念の弾切れ。もはやここまでか、と諦めかけたその時、救いのラッパが鳴り響く。応援の騎兵隊が駆け付けてくれた!
このシーンを見て、真っ先に自分はドラえもん映画でピンチの時に未来からタイムパトロールが助けに来るのを思い出した。Wikipedia によると「ドラえもんのび太の恐竜」では本作が参考にされているとのこと。やっぱりドラえもん映画は馬鹿にできない。

ジョン・ウェインが誰かに似てるなぁ、と思ったら高倉健に似ている気がした。

最終的に横領で逮捕される銀行家のゲイトウッドが道中の車内で「実業家を大統領にすべきだ!」と叫ぶシーンがある。現在(2018.1.2)、アメリカ大統領はまさしく実業家の人である。何となく嫌な予感がした。

終点のローズバーグではリンゴ・キッドとプラマー兄弟の一騎討ち。1対3の撃ち合いで勝ってしまうというのは、流石にちょっと…と思ったけど、まぁ映画だしね。

本作に対する小津安二郎監督の言葉がとても良かったので書いておきます。
「最近、僕はこれほど愉しい映画を見たことがない。映画が好きな士は勿論、映画が嫌ひな野武士も勿論、すでに映画に愛想をつかした牢人も、これだけは見る必要がある。 小津安二郎」
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