おけい

駅馬車のおけいのレビュー・感想・評価

駅馬車(1939年製作の映画)
3.5
死ぬまでに観たい映画1001本

1939年、鳴かず飛ばずで不毛の時代を過ごしていたジョンウェインを一躍スターダムにのし上げたジョンフォード監督の西部劇。

昔観たきりの再鑑賞。

西武劇は20代の娘時代、相当な作品数を鑑賞したのだが、ほとんど忘れてしまったよ。本作も駅馬車の疾走するシーンは脳裏に焼き付いているものの…

本作は主役のジョンウェインがリンゴキッドと言う早撃ちガンマンの役をやっており、西武劇でありながら彼を軸に駅馬車に乗り合わせた人々の人間模様に焦点を当てた人間ドラマでもある。

モデルとなった実在のリンゴはWIKIによると教養があり格調の高い英語を話していたという。3人の無法者に兄を殺され、西部の町々を仇をたずねて歩き、出会ったときには、たった3発で彼らを仕止めたというエピソードがあり、これが本作のリンゴキッドのモデルになった。

このイメージを意識したのか、無法者でありながら、貴婦人も娼婦も女性として対等に扱い紳士的で好感が持てる人物像。

一方で貴婦人には滅多に出会えないと賭博師(ジョンキャラダイン)が貴婦人に肩入れするのだが、天使に出逢ったというセリフもあり、こちらも純粋に自分の身を呈して貴婦人を守ろうとする男気が感じられる。

※豆知識
ジョンキャラダインは『デスレース2000』でスタローンと共演したデヴィッドキャラダインの父上ですね。

その他、気の弱い酒の営業マン、酒豪の医者、金を横領して逃げる銀行員、脱獄したリンゴを監視する保安官など個性的。

西武劇としてのアクションも迫力があり、不滅の名作と讃えられのも頷ける。終盤に持ってきたアパッチによる襲撃シーンは有名で、馬車の上に乗りショットガンを構えるジョンウェインはカッコいい。

しかし、これはシンデレラストーリーでもあるのじゃないかい?ぞんざいに扱われてきた身分の低い娼婦が、私にも幸せになる権利はあるのか?と苦悩しリンゴのプロポーズを受けることがなかなかできない。小さい時に家族を殺され生きる為にしてきたことを恥じないでほしいし、幸せになっていいんだよって思わず呟いてしまう。

それゆえ、ラストは爽快で保安官が一気に好きになること必須。こういう粋でにくい計らいは大好き。
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