ゆっきー

雪の喪章のゆっきーのネタバレレビュー・内容・結末

雪の喪章(1967年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

凄すぎて何から騙っていいのかわからんレベルだが、ラストでホラーになるというかなんというか…

戦争が終わったという開放感、灯火管制から解き放たれて廊下の電球を明るげな表情でつけていく若尾文子のカットから、旦那が中村玉緒とセックスしているのを目撃してしまうカットに繋がる。
この残酷な緩急の付け方が見事である。
また、玉緒から旅館を引き継ぎ、客を見送る若尾文子、「あぁこれで暮らしも楽になる」と思いながら観ていると二階の窓から血が降り注ぐ。このシーンの緩急もまた見事である。天才か?

天知茂と大阪で再会するシーンも上手すぎる。以前の朴訥とした青年の面影はなく、しれっと関西弁化し、俗な商売人になり下がった天知と、それに対して若尾が幻滅しているであろう心理を、天知が財布から名刺を出す時のぺろっと指を舐める仕草と、それを見る若尾の目のカットだけで表現してしまう。
つまり、指ペロひとつで10年の月日の長さを表現しているのである。

頼りない福田豊土が戦場から帰宅し、ただ狭い部屋の中で両手を前に組んで立っているその立ち姿の情けなさも見事であるし、急に抱きついてきて2人が画面下にはけると、かつて生業にしていた金箔がはられた水筒が画面に出現するというのも皮肉が効いていて上手すぎる。

いやな電報を受けて若尾が合宿?中の息子を尋ねていくと、息子は無事であり、笑顔のまま息子が部屋を出ようとすると、若尾が「い、いまなんか言わなかった?」と聞くのだが、この瞬間に引きの、部屋全体を写すような俯瞰ショットになる。
これが死ぬほど怖い。
マジで三隅研次、天才である。

あ、そーいやあと音楽も怖い。ホラーですよホラー。
ゆっきー

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