秋日和

雪の喪章の秋日和のレビュー・感想・評価

雪の喪章(1967年製作の映画)
5.0
冬になれば雪が舞い、春になれば桜が舞う。そして或る晩火事が起って舞うのは、金と銀の箔である。鋏で切るのは花と箔。斧で割るのは木材だ。剃刀は蛇にめがけ投げられて、首元を切る為には使われない。死の予感と負の感情、その二つが果てしなく作品に漂っていた。

三隅の降らす雪は本当に美しい。積もった雪は砂糖菓子のように輝いているし、その上に横たわる若尾文子のことも、とても綺麗と思う。彼女の内に秘めている感情は、俯いている時に少し首を動かすだけで、指輪が抜け落ちてしまうくらいにやせ細ってしまった白い指を摩るだけで伝わってくるかのようだった。なんて痛々しいのだろう。けれど彼女だって決して心が綺麗なわけではない。どんなときに笑みが洩れてしまったのかを考えれば、それは明らかだ(若尾文子と福田豊土夫婦の間に「壁」を作って割り込んだ中村玉緒は勿論どうしようもないけれど……)。

意識的にカメラ位置を低くしているショットや「格子越し」に人物を捉えてみせるショット、或いは奥行きを出すためにスコープ・サイズの画面をグッと制限してみせるなど、至る所に三隅の細やかな演出が見受けられる傑作。残酷なまでに美しい雪を、一度でいいからスクリーンで観てみたい。