川田章吾

チャップリンの黄金狂時代の川田章吾のレビュー・感想・評価

チャップリンの黄金狂時代(1925年製作の映画)
3.7
後半から怒涛の如く面白さが倍加する秀作。『モダン・タイムズ』や『独裁者』は政治的なメタファーがダイレクトだけれども、この作品は「人間の生きる様」を色々なベクトルから表現している。

例えば、冒頭、黄金に憧れ雪山に遭難したチャップリンたちは、食べ物がなくひもじい思いをする。あまりのひもじさに靴を食べる姿は滑稽だが、まさに黄金を求めて失敗した人間の「エゴ」と「悲しさ」がこのシーンに凝縮されている。
また、チャップリンの恋人となるジョージアは、自分を暴漢から救ってくれたチャップリンよりもお金を持っている男に恋をしてしまう。恋愛という視点から描いたシーンだがここにも同様の人間のマイナス面が描かれている。

しかし、後半からは一気に巻き返し、黄金を追いかけ続けた男とチャップリンで、黄金を持ち帰り大喜びをするシーン。これも「信じる」という人間らしい側面も描いていて、また金持ちになることで今まで不法移民として扱われていたチャップリンが紳士として扱われる。
これは恐らく、信じることで何者かになれるというアメリカンドリームを体現している場面だ。

このように黄金狂時代には、まだまだ語り尽くせぬ名シーンが沢山あり、演劇的な笑いも含まれていて、当時のアメリカの人々の経験からくる理想を体現した作品であったと言える。
特にスプーンダンスと山小屋シーソーは腹を抱えて笑った。

ただ、前半がかなり重く、途中飽きそうになってしまったのも事実で、後半の巻き返しでかなり評価が上がった作品。
もう少し前半からかっ飛ばして欲しかった。
川田章吾

川田章吾