タコさんウィンナー

フェリスはある朝突然にのタコさんウィンナーのレビュー・感想・評価

フェリスはある朝突然に(1986年製作の映画)
4.2
「怒りっぽい人って自分がちゃんとしてるのに人がちゃんとしてないから怒っちゃうんだよね。だからおれはね、ちゃんとしないようにしてんの笑」
前に「もろもろのハナシ」というテレビ番組でおぎやはぎの矢作さんがさりげなく言っていたこの一言が、なぜか頭の中をよぎりました。

「人生は短い。楽しまなきゃウソだ」主人公のこの言葉と行動を見て、大人は「甘ったれてんじゃねえよ学校行けクソ学生」と思うんじゃないでしょうか。でもそれって「自分たちはちゃんと責任を持って仕事してんのに学生身分が学業にも励まずちんたら遊びやがって」っていう一種の嫉妬だと思うんです。その気持ちもわかるんですが、結局それを言ったところで環境や状況は人それぞれなので自分の状況は変わりません。それどころか相手を変えることもほぼ不可能だと思います。「お前は周りに迷惑をかけてる!」と言っても気にしない性格の人は気にしなかったりしますしね……。こういうモヤモヤをよく体現していたのが主人公の妹と校長です。結局この問題に対するアンサーはヤク中の彼が言ったあの言葉だけだと思います。
関係ないんです。それよりフェリスの言うように、他人は気にせず自分のしたいようにして人生を楽しむほうがいいんだと思います
「楽しまなきゃウソ」の「ウソ」の部分とは、無意識に嫉妬を正論と言い換えて使ってしまう、ということなんじゃないかな、と思いました。

でもその上で、主人公フェリスはもうちょっと大々的に痛い目にあってほしかったなと思いました。それがあってから親と分かり合えていなかった友達の話が出てくるとちゃんと気持ち乗って見れた気がします。フェリスが一度自身の行動によりどん底に落ちてから、でもフェリス再起する。という流れがなかったからこそフェリスを好きになれないひとも多いんじゃないでしょうか。最後にフェリスが変化するところももっと印象的になったかもしれません。テーマ的にはかなり好きな内容だったので、ドラマ部分は若干物足りない感じがしました。

とはいえ究極の仮病サスペンスコメディというコンセプトがまずおもしろかったです。仮病で学校を休み、遊びに行く。そのために立てられていくワイルドかつやりすぎな作戦がおもしろく、ケイパーもののようなワクワク感がありました!とりあえず主人公は機械いじりで職にありつけるのでは…(笑)

美術館での謎のクロースアップやビルの窓から町を見下ろす人物を下から撮る謎のショットなど、おもしろい見せ方も続出していました。第4の壁を越えるのも印象的です。

ラストの帰宅シークエンスのワクワク感も最高で、これはスパイディも真似したくなるね!と思いました。

トータルで言えばだいぶ好きな映画でした!