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宮本武蔵 二刀流開眼のMASHのレビュー・感想・評価

宮本武蔵 二刀流開眼(1963年製作の映画)
4.0
『二刀流開眼』という題名の割には、二刀流を見せたのは中盤の一瞬だけ。というか、前作以上に宮本武蔵自身よりも周りに人々に焦点が当たっている。前2作で登場した人物が一箇所に集まり、そこに高倉健演じる佐々木小次郎も混ざり、どちらかといえば群集劇に近いような形で物語は進んでいく。

少し大きな盛り上がりに欠ける感じではあったが、宮本武蔵という人物が周りにどのような影響を与えていくのかがより鮮明に見えてくる。特に吉岡清十郎の最後のシーンは中々グッとくるものがあった。名家に生まれ本当の意味で戦ってこなかった彼が、宮本武蔵との戦いによって名家としての最後の最後に意地を見せるのだ。それを見た宮本武蔵が「切るのではなかった」と言う。なんとも悲しくもあるシーンだ。

高倉健演じる佐々木小次郎は、最初はその格好といいキャラクター性といい、違和感しかない。しかし、話が進むにつれて彼の鋭い眼光や立ち居振る舞いが佐々木小次郎として合っているような気がしてくる。流石は健さんといったところだろうか。

この作品はこの五部作で最後のヒット作となってしまったわけだが、それもなんとなく分かる。この映画には宮本武蔵が人を切るシーンがほぼないため、観客はこの次の『一乗寺の決斗』に期待を抱かなくなってしまったのだろう。しかし、この映画は宮本武蔵自体よりも彼の周りを見るための映画だ。そうやって見るとまた印象が変わるのではないだろうか。
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