COZY922

未来を生きる君たちへのCOZY922のレビュー・感想・評価

未来を生きる君たちへ(2010年製作の映画)
3.8
誰の心の中にもある闇の部分。怒り、恨み、屈辱感、憎悪。負の感情を抱いた時に心の奥底に不健全な衝動が湧き上がったことはないだろうか・・?もちろん、大半の人は犯罪を犯したりはしない。でも実行はしなくとも心の中で「仕返ししてやりたい」とか「こんな人死ねばいいのに」と思ったことが1度や2度はあるんじゃないだろうか。

本作は「復讐心」を、多感で傷つきやすい年齢の子供を通じて描くと同時に、それと対比させるかのように大人の心情も取り上げ、説得力とある種の共感と戒めを喚起してくる。強く感じたのは「瞬発的な怒りの制御」と「理不尽な人や出来事にどう対峙するか」ということだ。

不条理への報復心が高じて車の爆破をした少年。アフリカの難民キャンプで、ゲーム感覚で妊婦を殺す武装集団のボスを見殺しにした医師。病気で母を失った少年のやり場の無い慟哭が、子供ゆえの悪へのストレートな反発を更にエスカレートさせた。医師の男性は 妊婦の死を冒涜する鬼畜に接し、抑えてきた感情のリミッターがはずれて現地の人々によるリンチを容認してしまった。

場所や年齢に関わらず普遍的とも言える 制御が難しいほどの強い怒りには絶対的な解は無いのかもしれない。復讐は全てを解決する力にはなり得ないことを知るのも人の痛みを感じることを覚えるのも家庭や地域社会からだ。即効性は無くとも環境作りや教育でそういう意識を育むより他に手立ては無いと思う。

対峙の仕方についても同様だ。秩序ある大人社会なら、法的な手段を講じることもできる。だが、大人と子供, 先進国と途上国, 社会的治安が確保された場所と内紛や極端な貧困に苦しむ場所では事情も異なる。正義も道徳心も一義的には決まらない現実。それでも、自分の未来, 次の世代の未来を考える時、難しくも避けては通れないこれらの問題に向き合っていくしかないのだろう。

賭け事のために妊婦の腹部を切り裂き 屍姦が好きだから遺体をよこせと言った武装集団のボスがリンチされるのを見て、制裁を受けて当然だと感じた私の心の中にも闇がある。不穏な色の空。風を感じる風景。観ているこちらの心まで染めていくような心象風景がとても響いた。