ロイバッティ

ヒア アフターのロイバッティのネタバレレビュー・内容・結末

ヒア アフター(2010年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

感動した。
死に直面して以降、日常生活を送れなくなった3人が日常生活を取り戻す話。

終盤、時間の感覚が分からなくなる。
マーカスもキャスターも突然一年後になっている。キャスターがブックフェアに行く身支度をしている場面で聞こえる、出版社からのオファーの電話。この電話はブックフェアの日から数ヵ月前のものらしい。映像は一年後くらい、音声は数ヶ月後とちぐはぐ。
マット・デイモンはディケンズのツアーコンダクターに「今日は何日?」なんて聞く。事前に申し込んだはずの大好きな作家のツアーの日にちを忘れるか?
この時間の省略や混濁は、マットが見たりキャスターが体験した時間のない死後の世界のよう。彼らは謂わば日常を失った死人である。

そして、そんな失われた日常を取り戻すのはマーカスの普通の優しさ・おせっかいであり、マットとキャスターの普通の一目惚れである。
マットがキャスターとキスをする妄想。彼は少し先の憧れた未来を想像する。
死後の世界に行く握手は、現世を取り戻す握手に変わって終わる。

絶望的な状況に陥った特異人間マットが至って普通のことで救われる、この落差には意表を突かれた。
こういった非凡から平凡への逆どんでん返しは見たことがない。
これを成立させてしまうクリント・イーストウッドはすごい。