にじのすけ

ツィゴイネルワイゼンのにじのすけのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
5.0
邦画で一番好きな映画。
鬼気迫る映像美。
今は亡き原田芳雄、藤田敏八の静かな狂気を感じさせる演技。
あの世とこの世の境目・釈迦堂切り通しを筆頭に、逢魔々時、目には見えない魑魅魍魎が跋扈する禍々しい美を感じさせる鎌倉を中心としたロケ地。どれをとっても極上です。
デビッド・リンチ映画のように緻密な解釈が成立する、といったたぐいの映画とは全く性質の異なる映画です。
これはこの作品の1つの見かた(というか味わい方)としてですが、4人の主人公たちは既にこの世にはおらず、肉体から遊離し浮遊するその魂魄がその死を受容できず、自らの妄執に彩られた狂気の世界にそれぞれ囚われている様を描いた作品、とも言いたくなるような、一種異様な世界です。
本作の原作となった内田百閒の「サラサーテの盤」「山高帽」といった作品と併せて鑑賞すると、その幽玄な世界観をより深く堪能することができます。
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