日本映画が見たいというミーくんのリクエストに応じて。
これはリアルタイムで見た。東京に出て来た年だったと思う。当時もびっくりしたけど、今見ても傑作。かつての経験を、まるで初めての経験したように経験した、そんな気分。
大楠道代の食べる艶かしさ。大谷直子の透き通るような白い幽玄。原田芳雄の臭い芝居が恐ろしくなってきて、藤田敏八の硬い芝居がどんどん決まってくる。
映画がきちんとストーリーを語ってくれているのに、言葉に起こすことが難しい映画というのがこれ。なんでも、この作品が着想を得た内田百間の『サラサーテの盤』も語ることを拒絶する読み物らしいので、そちらも読んで見たくなる。
リズムと肌理。それだけで物語が転がり出し、いつしか映像に引き込まれ、気がつけば、あちらの世界へのとば口に立っているという、そんな不思議な体験。