クルードス

震える舌のクルードスのレビュー・感想・評価

震える舌(1980年製作の映画)
4.0
チョコパン食べたい。

観る前は「病気版エクソシスト」と思っていたが、そういったジャンル映画的なイメージだけではなく、トータルでとても良く出来た作品!

素晴らしいと思ったのが、様々な観点で全てが濃密に描かれている事。

娘の破傷風が発症してから入院までは病気の症状の恐ろしさ、その後は看護を続ける家族の苦しみや悩み。
そして同時進行で担当の女医の病気との戦い。
そして、一番苦しんで戦い続けてたのは娘本人だったという流れ。

父親は最初から破傷風が移る事を心配しており、母親にそれを咎められる。
しかし、看護に疲れて娘の辛そうにしている姿を見させられ感情もボロボロにさせられていくにつれて、母親も破傷風に感染したと思い込んでいく。
絶対に移るはずが無いのに長く看護をしていると、ふと移るんじゃないかという事にとらわれる。
そんな事が過去に自分もあったのでリアルだなあと感じた。

女医がもう何度目か分からない発作の対応をした後、一人で病室を去り廊下を歩いている姿。
表情も見せない後ろ姿のカットだが、観客に色々感じさせる素晴らしい画。
そして最後に女医は教授に呼ばれてエレベーターに乗ったところでこの家族に別れを告げるが、これはこの女医がこれからもまた別の病気との戦いが続くという事の暗示なのかと感じた。
医者って本当に大変…。

あと、お見舞いにくるお婆ちゃんも良かったなあ。
孫娘の痛々しい姿を見て卒倒するのかと思いきや、ショックを受けつつも気丈に振るまい、こんないい子なんだからきっと大丈夫と根拠の無い理由で励ます。
あー!お婆ちゃんっぽい!

ホラー的な演出や、医療場面でのいかにも痛そうな描写も印象的だが、まず人間ドラマとして良く出来ていた。

が、自身ちょっと体調不良で昨日久し振りに病院に行き、明日は検査でまた違う病院に行く予定のタイミングで観る映画では無かったと少し後悔(笑)