みおこし

我は海の子のみおこしのレビュー・感想・評価

我は海の子(1937年製作の映画)
3.9
クラシック映画のお勉強!『風と共に去りぬ』『オズの魔法使』の監督ヴィクター・フレミングの作品。

金持ちの生意気な少年ハーヴェイ。航海中に船から転落したところを漁師のマニュエルに救われ、しばらく漁船で過ごすことになるがそこでもワガママし放題。しかし、マニュエルはじめ男気に熱く海でたくましく生きる漁師たちの姿を垣間見るうちに、彼の心にも変化が訪れ始める。

なぜもっと早く鑑賞していなかったのか自分が恥ずかしくなるくらいの傑作でした。観ている方はかなり少ないようですが、クラシック映画の中でもトップクラスで観やすく、心温まる一本。
スペンサー・トレイシー、ライオネル・バリモア、メルヴィン・ダグラスという1930年代以降を代表する名優3人が珠玉の演技を見せてくれています。他の方も書いていらっしゃいましたが、スペンサー・トレイシーとメルヴィン・ダグラスそれぞれの最高傑作なのではないでしょうか。特に本作でオスカーを獲得したトレイシー扮するマニュエルの人情味溢れる姿が絶妙...!!下手にハーヴェイを子供扱いしすぎず、1人の男として接していくのですが、その背中のかっこよさと言ったら...。どうしようもない問題児のハーヴェイがみるみるうちに素直な少年に変わっていくのもうなずけます。子役のバーソロミューくんも涙を流す演技がリアルそのもの、真に迫る熱演でした。

自分が過ごしてきた世界と対極の場所に行って初めて、人は自分が置かれていた環境を理解できるもの。何もかも恵まれて育ったハーヴェイにとって、海の上の暮らしは過酷そのものだけどその分誰にも教えてもらえなかった大切なことを学んでゆく。
だからこそあの結末はもう涙が止まらなかったです。失った時間はもう戻らないということをハーヴェイ自身も、そしてメルヴィン・ダグラス扮する彼の父親も実感する。でも、これから時間を作ることはいくらでもできる。あのラストシーン、メルヴィンの演技も合まって最高でした。

古い映画はシンプルだからこそ、とにかく胸に響きますね。白黒映画なのに海のシーンがとても美しくて心癒されました。子供から大人までおすすめ!
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